2002年2月25日
ついこの間の話ですけどね。アタシャ徹夜で仕事をしながら、テレビ音声でオリンピックを聴いてたんです。別に競技は何でもよかったんですが、そのとき、たまたまやっていたのは男子エアリアルでした。
エアリアルってのは、簡単に説明すると、スキーを履いたまま空中高く舞い上がって、宙返りの技を競う採点競技です。試技は2回で、1回目が予選。1回目の上位12人が予選の点数と決勝の点数を合計してメダルを争います。
で、予選の方はほとんど見てないんですが、競技の最後の方になって、やっと手がすいたので、あたしは優勝争いに注目することにしました。すると、呆れたことに、またまたアメリカの審判が露骨な「塩湖ひいき」をやってたんです。
それはもう、誰が見たってヒドイ採点でした。オリンピックでは、まだ誰も成功したことがないという、3回転5回ひねりの大技をチェコの選手が決めたんです。3回転5回ひねり!
“シュパパ・シュパパ・シュパッ!” 立ったぁーっ!
息を飲む観客、そして歓喜のガッツポーズ。アッという間の出来事で何回ひねったかスローモーションでなければとてもわかりません。それはもう、十円玉を親指で思いっきり弾いたら、たまたまテーブルの上で立っちゃったという感じでした。
ココまで来ると、もう神業です。その神業が見事に決まったんだから、たまりません。誰もが満点近い点数が出るだろうと、ワクワクしながら電光掲示板に目をやりました。
アレシュ・バレンタ。それは、無名のチャコ人に世界中の注目が集まった瞬間でした。アメリカの記者は、この大技にジューサーミキサーという名前をつけたそうですが、なんと、この日までにジューサーミキサーが成功したことは、たったの3回しかなかったそうです。決勝でこの技を出すことは、一か八かの大ギャンブルだったんですね。
と、ところが!
エア点7点満点のところ、アメリカの審判が出した点数は、たったの5.4点。大喜びだったチェコ選手の表情がにわかに曇りました。
「もう、やってらんない。アメ公に死を!」
あたしはチェコ選手がチェコ語でそうつぶやいたのを見逃しませんでした。他の4人のジャッジはいずれも6点台ですから、これがアメリカ選手だったら6.9点は確実に出したでしょう。いや、露骨に7点満点を与えたかもしれません。
あたしゃもう、そこでブチ切れですよ。
『もう、オリンピックなんか、いらない!』と本気で考えました。だってそうでしょー、他の誰もできない大技を着地まで見事に成功させたんです。それだけで十分、金メダルの価値があるじゃないですか。もう、ヒドイを通り越してましたね。「アメリカでやってんだから当然じゃん!」と言ってるように感じました。
わかってたのかなぁ? フィギアスケートの本田君。本田君は、どうしてフリー演技でギャンブルをしなかったんでしょう。ギャンブルせずに、無難にまとめて4位。それがなんだと言うんですか、本田君。
本人は、今までの最高が5位だったから、それで満足かもしれません。でも、国民が期待してたのはメダルなんです。メダルに手が届かなきゃ、4位も10位も日本国民にとっては同じですよ。
4位がミソ、10位がクソ。まあ、それぐらいの違いしか感じやしません。例え成功率10%でも、4回転・3回転・3回転のコンビネーション・ジャンプをやるべきだったでしょう。
3位になったのはアメリカの選手でした。ということは、無難にまとめて勝てるわけがないんです。例えアメリカの選手が転んでも、得意の「塩湖ひいき」で本田君の負けは見えていました。純白の雪と氷の下では、ドス黒い金が動いていたんですよ。
さて、問題のエアリアルは、どうなったかというと・・・
あたしゃ『もう見てらんない』と思ってテレビのリモコンに手を伸ばそうとしたんです。でも、次は1回目に最高点をマークしたアメリカの選手が跳ぶ番だったので、我慢して最後まで見届けることにしました。
『それじゃあ、八百長の成果でも、とくと拝見しましょうか』
そしたらね、金メダルを約束されていたはずのアメリカ選手が、大失敗の転倒ジャンプで最下位に転げ落ちたんです。一瞬、会場の空気が凍りついたような気がしましたが、そのあと得も言われぬ雰囲気に会場は包まれていきました。
そうです。アメリカ人以外の観客は、心の中で「ざまぁ見ろ!」の大合唱をしていたのです。世界中の言葉でね。あたしは、このとき初めて、崩れ落ちる世界貿易センタービルを見て喜ぶビン・ラーディンの気持ちがわかりました。