たったひとりの応援団

応援演説

「三・三・七拍子」と「カットバセ!」・・・これはすぐにでも法政大学の応援リーダーになれるぐらい練習を重ねた。あとは校歌斉唱の指揮をとる練習。それから、観衆を盛り上げるための「演説」を練習しなければならない。演説ってのはどうやるかと言うと、まず、「我々は、なんとかかんとかであるー!」と言って白い手袋をした右手を高く挙げる。すると・・・

「そうだー!」

と観衆が一斉に応える。これを2、3度繰り返し、

「それでは、打線の爆発を祈って」

「三・三・七拍子!」

という具合に、次の動作へつなげていくのである。これが上手くいくと、一気に盛り上がり、逆に下手だとトーンダウンしてしまう。だから応援演説はひじょーに難しい。

まず、試合中何度もやるから、パターンを何種類も考えておく。試合前、ピンチのとき、ランナーが出たとき、点を奪われたとき、ラッキーセブン・・・、場面に応じてパターンをドンドン変えていくのだ。たとえば1点先に取られた時は、

「我々は」

「リードされないと」

「燃えないのであるー!」

「そうだー!」

「やっちまったな、××高校」

「君達は」

「ダイナマイト打線に」

「火をつけちまったんだよー!」

「そうだー!」

「さあ、ダイナマイト打線の登場だ、レッツ・ゴーでいくぜー!」

「イェー!」

チャン・チャン・チャチャチャ・チャチャチャチャ

「レッツ・ゴー!」

チャン・チャン・チャチャチャ・チャチャチャチャ

「レッツ・ゴー!」

とまあ、こんなセリフを次から次へと繰り出していくのである。

当時、見ている人達は『気持ちよさそうだなー』と思っていたらしい。ところがどっこい、その裏には血のにじむような努力があったのだ。下手なアドリブでは、なかなか観客が沸かない。だからアタシは、受験勉強のフリをして、ひたすら応援演説の台本を書いていた。

ではここで、応援演説に欠かせないないコツを列挙してみよう。

  1. 真剣な眼差しでオバカなことを言う。(観客を楽しませ、ガッチリ注目を惹きつける)
  2. パターン化されたリズムとメリハリ。(「そうだー!」のタイミングがバッチリ合うように)
  3. ひねり過ぎてはいけない。(わかりやすいセリフでないとノリが悪くなる)
  4. 相手は悪役、自軍は正義。(正義が負けるはずはないという「強い信念」を植え付ける)
  5. リズムを良くするため、セリフの字数を合わせたり、韻を踏んだり。(意外にも応援演説は文学的)

アタシは、これらのことを法政大学応援団から学んでいた。