負け組の星?

「日々これ連敗 競走馬ハルウララ」の感想

2003年12月21日

19日の23時から放送された NHK 「にんげんドキュメント」に高知競馬で100連敗を達成?した競走馬、ハルウララが登場した。「にんげんドキュメント」で人間以外の動物が主人公になったことは、未だかつてないそうだ。マスコミ各社も面白がって「負け組の星」とか「勝たないヒロイン」と書き立てているが・・・

まず、「にんげんドキュメント」の冒頭で高知競馬の現状が語られた。高知競馬は年々売り上げが減少し、累積赤字がこの春までに88億円になったそうだ。そこで、この累積赤字を高知県が肩代わりし、まず徹底的なリストラが行われた。そのかわり、もし今年も赤字なら即刻廃止の運命にあるという。

ここからは想像だが・・・

高知競馬は必死にお客さんを呼ぶ作戦を考えた。競馬場に若者や女性を呼ぶための会議が連日行われたのだ。

「フリーマーケットは?」

「イマイチ、パワー不足だな」

「じゃあSMAPでも呼んだら?」

「そんなカネがどこにある!」

「じゃあ、スターを育てれば?」

「育てるヒマなどない! それに強い馬なら中央競馬にいくらでもいる」

「じゃあ、逆の発想で、弱い馬をスターにでっち上げたら?」

「それだ! それしかない!」

そこで、4年間まったく勝ち星のないハルウララに白羽の矢が立った。

ということで、「にんげんドキュメント」に話を戻そう。

ハルウララは素人目に見ても弱々しい馬だった。父は天皇賞馬のニツポーテイオーだが、馬体が小さいので中央競馬では買い手がつかなかったのである。馬キチのオヤジに訊いてみると、最近の中央競馬には、サラ4歳以上で体重440kg以下の馬はほとんどいなくなっているという。昔は400kg未満の馬もいたが、だんだん大型化して体重が600kg近い馬もいる。今では体重440kgが中央競馬のボーダーラインらしいよ。

『高知競馬の馬と比べても一回り小さいな。ということは体重420kgぐらいか?』

『なんだよ、他の馬に怯えて震えてるじゃん。これじゃ勝てそうもないねー』

『メンコにキティーちゃんのアップリケが付いてる。なんかいかにも弱そー』

ここで高知競馬を訪れた2人のハルウララ・ファンが紹介された。一人は高知に単身赴任してきた50歳の保険屋さんで、ちょっとワケアリっぽいオジサン。もう一人は乳ガンと闘う初老の女性だった。この人達に言わせると・・・

「ハルウララを見ていると、励まされるんですよ」

「ウララちゃんが頑張ってるから、アタシも頑張ろうという気になるんです」

うーん、この辺の演出は流石に NHK である。見ている人に『弱い競争馬にも存在価値がある』と思わせるところがウマイ!

つづいてテレビは競馬場のグッズ売り場を取材。ハルウララの尻尾の毛が入っているお守りは「当たらない」ということで「交通安全」と書かれていた。すでに3,000個ほど売れているという。

『こんなことしたら、ハルウララが勝った時点で終わりだろ!』

まあ、それはいらぬ心配だと思う。とにかくハルウララは弱いのだ。先行するがスタミナがないらしく、直線で必ず振り切られてしまう。それでも98戦目と99戦目は連続で3着になったけどね。

じゃあ、いったいハルウララがもらった3着の賞金っていくらなんだろう?

1着 105,000円 2着 27,000円 3着 13,000円 4着 9,000円 5着 6,000円。

『えーっ! たったの13,000円?』

(`ё´!

なんとなんと、賞金総額16万円。高知競馬では個人だってスポンサーになれるらしい。

☆個人協賛レース申し込みを好評受付中!

個人協賛「想い出レース」は協賛料が1万円。うち5,000円は当該レースの勝利騎手に贈られます。あなたもお好きなレース名を付けて「マイレース」を楽しみませんか?

協賛者には、レース名の入ったゴール写真に優勝騎手のサインを入れてプレゼントする他、来賓席での観戦や食券・予想紙の提供など特典がいくつかあります。

詳しくは高知県競馬組合までお問い合わせ下さい。
高知県競馬組合業務課広報 088−841−5123

では、ハルウララが最近出走したレースを並べてみよう。あるあるあるある。「想い出レース」だと思われるタイトルが付いてるよ。

麗(うらら)お誕生日記念特別ってのが笑えるね。ハルウララの誕生日は2月だから、麗(うらら)というのは女の子の名前だろう。多分、「陽香」も女の子の名前だ。それから、重松清さんはウララの本を執筆中のエッセイストらしい。

高知競馬もなかなかやるなぁ。

じゃあ、中央競馬(jra.go.jp)で一番賞金が安そうな第1レースの賞金を見てみようか。

中央競馬会 未勝利 サラ2歳

1着 500万円 2着 200万円 3着 130万円 4着 75万円 5着 50万円

一番賞金が安いレースでも3着賞金が100倍。じゃあ、有馬記念は?

1着 1億8000万円 2着 7200万円 3着 4500万円 4着 2700万円 5着 1800万円

『この差はなんなんじゃー! ケタが3つも違う』

ハルウララは5年で106万5千円しか稼いでないのに・・・

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テレビはここで厩舎を離れる一頭の競走馬を寂しげな映像で紹介した。「厩舎を離れる」とは、即ち「馬肉にされる」ことを意味するらしい。普通の競走馬は勝てなくなるとそういう運命を辿るのだ。

しかし、ハルウララを育てる宗石調教師は違う。「ここは馬の老人ホームですよ」と言いながら、ハルウララより年を食った9歳や10歳の馬たちにエサをあげているのだ。お金がないから高価な配合飼料なんか買えない。でも、なんとか馬たちを勝たせてやりたいから、農家の畑を借りて自分で牧草を育て、新鮮なエサを与えている。

「元気で走れるうちは走らせてやりたい」

ここで視聴者を泣かせる。厩務員の藤原君が冷蔵庫を開けると、全国のハルウララ・ファンから届いたニンジンの山が・・・。もうダメ。涙腺の弱い人はここで大泣き。ここに映し出されているのは、もはや厳しい競争社会ではない。「動物愛護」と「癒し」の世界だ。

そして100戦目。すでに紹介した2人のファンも高知競馬場に来ている。(こういうのはヤラセと言わんのか?)

オジサン「あ”−!」(やっぱりダメかという表情のあとニコッ)

オバサン「・・・」(涙を拭きながら)「ウララちゃんよく頑張ったよ。また今度頑張ろうね」

とてもイイ話に仕上がっていた。今年良いことがなかった人達にとっては、この上ない励ましになるだろう。

しかし、上には上があったのだ。

【連敗馬の『へぇ〜』】ZAKZAK より

連敗の記録は、浦和競馬で走ったハクホークインの161連敗。現役だと名古屋競馬で105連敗中の6歳牡馬のグレースアンバーがいる。

つまり、ハルウララはでっちあげられたヒロインなのだ。「にんげんドキュメント」【日々これ連敗 競走馬ハルウララ】の放映も高知県知事の橋本大二郎さんが、元 NHK 記者だったことと無縁ではなかろう。知事が NHK にいた頃の同僚は当然 NHK の幹部になっているはずだ。

しかしねぇ、アタシャ、橋本大二郎知事と高知競馬のアイデアが素晴らしいと思ったんだよ。ドキュメンタリーの映像からも必死さが伝わってきたし。

さあ、これを読んだみなさんも高知へハルウララの馬券を買いに行こう。リストラ除けのお守りにもなるみたいだよ。そろそろ必要な人もいるだろ。ちなみに、ハルウララは人気が出たおかげで引退後の引き取り手がすでに決まったらしい。これで思う存分負け続けられるだろう。

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高知競馬オフィシャルサイト

この話の続編(2004.2.16)