キッチンの感想

吉本ばななの本

2004年1月31日

今月はこの一冊しか読まなかった。と言っても、ざっと二度読み、あとで、えり子さんのセリフを追って何度か読みかえしてみた。えり子さんというのは、大学生の息子を持つオカマバーのミスター・マダムで、アタシは、このえり子さんに映画【福耳】に出てきた宝田明を重ね合わせて【キッチン】を読んでいた。

【福耳】という映画が気に入ったわけではないのだが、オカマ役の宝田明だけはモノスゴク生き生きしていた。まるで「水を得た魚」みたいにね。もし宝田明が出てなかったら、この映画はまったく印象に残らなかっただろう。

【福耳】を観たときの感想文

ところで、この小説には食事のシーンがたくさん出てくる。一貫して食べ物やキッチンを中心に話が展開し、その中にところどころハッとするような情景描写があり、常識にとらわれない登場人物達の行動が静かに描かれていく。

とにかく普通じゃない。自然なようで常識からは外れている。でも、『そうしたいのだから、そうするしかない』『周囲からどう見られようと、やりたいようにやるしかない』という流れなのだ。大切なのは世間一般の常識じゃなく、どうやったら楽に生きられるか・・・ということなのだろう。勝手な解釈だけど。

そう言えば、テレビに出てくるカバちゃんやオスギは楽そうだ。男なら角が立つような仕事も無難にこなしてしまう。オスギは【ミスティック・リバー】の宣伝で「涙がとどめなく流れました」なんで言っていたが、アタシは『まったくオスギのカマヤロー』と思いつつも、笑って許しているのである。

この本を読んでみると、生活の基本は、やっぱり「食」なのかな・・・と思う。この小説の中で食事は「空腹だから食べる」という単純なこととしては描かれない。そこに描かれているのは、誰かといっしょに食べるときの満足感。誰かのために食事を作る幸福感。冷蔵庫を食べ物で満たしたときの安心感などである。

心が飢えていると、ひとりで食べても満たされない。たとえそれがどんなに美味しい食事でも。だから、みかげは夜中にタクシーを飛ばして伊豆からi市までカツ丼を出前してしまう。ここに登場するi市がどこかというと、それはアタシの住む伊勢原市に間違いない。確かに伊勢原市には豆腐料理で有名な店やケーブルカーがあるのだ。

吉本ばななの本は、これを機会にもっと読んでみようと思う。【キッチン】がデビュー作なので、他にもっとスゴイのがありそうだ。

キッチン ( 著者: 吉本ばなな | 出版社: 角川書店 ) キッチン kitchen キッチン ◆20%OFF!<DVD> [ASHB-1338]

文庫本 1989年の映画 富田靖子主演の韓国ドラマ