「誰も知らない」の感想

無名の方が気楽だ

2004年9月2日

きのうガソリンの値段が一気に跳ね上がった。107円だった店が114円。109円だった店が116円になっていた。別にサウジの油田が吹っ飛んだわけでもないのに、どうしてこんなに値上げされるんだろう。その理由は誰も知らない。

『そう言えば、きょうは“映画の日”だな。全作品1,000円均一だ』

ガソリンが高くなった分はどこかで帳尻を合わせるしかない。そこでアタシは、かねてから観たいと思っていた【誰も知らない】を海老名の TOHO CINEMAS で観ることにした。

映画「誰も知らない」サウンドトラック

映画「誰も知らない」サウンドトラック

驚いたことに300人収容のスクリーンが8割ぐらい埋まっていた。過去に座ったことのない前から3列目の席しか空いてない!

『うわぁー、なんか首が疲れそうだぞ』

席についてみるとスクリーンの上の方が見づらかった。アクション映画だったら目が回ってしまっただろう。141分という時間がツライものにならなければいいが・・・

『一番年下の女の子がカワイイなー』

まず思ったことはこれだ。あとで調べたのだが、一番下の女の子「ゆき」を演じていたのは、清水萌々子という6歳の女の子。この子はとてもカワイイので今後CMなどに出てくるだろう。

そう言えば杉田かおるも子役の頃は「超」がつくぐらい可愛かった。あの超人気子役「チー坊」が、まさか「すれっからし」の「酒びたり」になってしまうとは・・・誰も想像しなかったよね。

子供の頃から有名人として過ごしてきた彼女は、口で言い表せないほどの苦労をしただろう。どこへ行っても注目を集めたに違いない。だから、「誰にも知られていないこと」がどれだけ尊いかを一番よく知っていると思う。

今回、「誰も知らない」でカンヌ国際映画祭 最優秀男優賞を受賞した柳楽優弥くんも将来苦労すると思う。ついこのあいだまで「誰も知らない子供」だったのに、1本の映画がキッカケで「世界が注目する子役」になってしまったのだ。

監督の撮り方が上手いのか、それとも柳楽優弥が天才なのか・・・この映画を見ただけではわからない。しかし、是枝裕和監督の目が確かだったことは間違いなさそうだ。「誰も知らない」の子役紹介を見ると、イジメられっ子を演じた韓英恵(かん はなえ)以外は過去の出演作品が何もない。オーディションで過去に実績がない子供を選んだのだ。

この映画の何が素晴らしいかというと、子供達の表情やしぐさに、まったく不自然さが見られないこと。子供達には『演じている』という意識がないのだろう。どんな映画が出来上がるのかもわからなかったと思う。本当の家族と一緒に過ごしているように見えるのだ。セリフのひとつひとつも「言わされている」というカンジが微塵もない。

是枝監督はオーディションからクランクアップまで、およそ1年半、子供達と一緒に過ごしたらしい。その膨大な時間がなければ、こんな映画を撮るのは無理だ。

内容については極力触れないことにしよう。観れば必ず何かを感じると思う。それが何かは百人百様だが、この映画を『つまらない』と感じる人は、そう多くないはずだ。そのかわり、客席の反応をお伝えしておく。エンドロールが終わって館内が明るくなるまでは誰ひとり席を立たなかった。映画がはじまる前の予告編を入れると2時間半以上なのに・・・200人以上観ていたと思うが、誰ひとり暗いうちは席を立たず、アタシが席を立って出口に向かっても、なお席に釘付けになっている人が多数いた。

アタシの場合はね、映画館を出てからしばらく何も考えられない状態になったよ。ただ、映画の中のシーンがぐるぐる回るだけ。そして、家に帰ってからジワジワ感動の波がきた。感想を書こうと思っても、6時間ぐらい何も書けず、寝るしかなかった。言葉が出てこないんだ。あまりにもいろんなことを連想させる映画だったので、何を書いていいのかわからなくなってしまった。

感想と評価

となりの女性は終盤でかなりショックを受けたようだった。しかし、この事件が日本で起きたから異常に見えるのであって、世界に目を転じれば「日常」よりよっぽどマシだろう。

不思議にも重く暗い気持ちにはならない。その点は大丈夫だ。しかし、見る人がどれだけ心を揺さぶられるかは、生まれた土地によって多少変わってくると思う。アタシは東京で生まれ、21歳まで都心で暮らしていたので、この映画で心を揺さぶられた度合がキツかった。およそ震度6の烈震だ。本当にいろいろ考えさせられる。

是枝監督って感性が鋭いよ。過去の作品「ワンダフルライフ」を是非観てみたい。「誰も知らない」の評価は A にしておくぞ。きっと都会育ちの人ほど心を強く揺さぶられるだろう。

ワンダフルライフ

ワンダフルライフ('99)

映画をすでに観た人向けのトリビア(蛇足)

明が妹の父親を訪ねていくシーンに使われた「シンセイ八億」というパチンコ屋は平塚にある。ここでアタシは『なぜ平塚なのか?』という疑問を持った。もしかすると超リアルに事件を再現したのかもしれない。そこで高円寺から平塚まで、どれぐらい交通費がかかるかを計算してみた。

高円寺→新宿→(小田急新宿線)→相模大野→(小田急江ノ島線)→藤沢→平塚。(小児:460円)

平塚からはバス。平塚駅北口→(神奈中バス)→四ノ宮あたり(小児:90円)

ということで、明少年が平塚のシンセイ八億へ行くために使った交通費は往復1,100円。自動販売機のジュースを買うとき、オヤジに10円せびられたので、出費は合計1,110円になる。愛(あゆ)のオヤジから5,000円むしり取ったが・・・このとき明少年が得たお金は、差し引き3,890円にしかならないことがわかった。

なお、ゆきのオヤジが勤めている東京無線タクシーは高円寺の近くにあるので、子供でも歩いて行ける距離だ。

あ”−、またクダラナイことを調べるのに時間を使ってしまったーっ。

(`⊥´)ゞ

なぜこんなことを考えたかというと、この映画があまりにもリアルだからだ。たとえば、明少年がカップ麺にお湯を注いだ状態で急な階段を降りていくシーンがあったでしょ。電気もガスも止められた状態だから、必然的にそうなったんだよ。

しかし、このシーンの挿入を普通の人間が思いつくだろうか? 答えはノーだね。「カップ麺+階段」のシーンを見たとき、『この監督の感性はあまりにも鋭い』と感じた。リアルすぎてリアルすぎて・・・だから『平塚へ行ったのは本当かもしれない』と思ったんだ。