「隠し剣 鬼の爪」の感想

2004年11月5日

きのうは山田洋次監督が撮った隠し剣 鬼の爪を観てきました。映画を見るまで知らなかったのですが、これは【たそがれ清兵衛】と同じ庄内藩(映画の中では海坂藩)を舞台にした映画です。二度も同じ舞台で撮るってどういうことでしょう? 原作者も【たそがれ清兵衛】と同じ藤沢周平なのです。

まず、同じ舞台で二本目ということで【たそがれ清兵衛】より「強いこだわり」が感じられました。真田広之も良かったけど、今回の永瀬正敏の方がもっとうらぶれたカンジで、とても「隠し剣」の使い手とは思えないところが、逆に本当の下級武士っぽいです。

家に帰ってからインタビュー記事を読んだのですが、永瀬正敏は本当に自分の髪を剃って撮影に臨んだんですね。真田広之の方が良かったという意見が多いでしょうが、アタシは『永瀬正敏も良かった』と思います。宮崎県出身なのに庄内弁がとてもうまかった。特に方言については監督が一作目よりこだわったのでしょう。永瀬も松たか子も、方言のアクセントが正確でした。

それから「テーマ」ですが、【たそがれ清兵衛】の場合は「下級武士の生活そのもの」に焦点が当たっていたのに対して、今回は「武士の身分」に焦点が当たっていたと思います。だから、【たそがれ清兵衛】とセットで見れば当時の下級武士のことが「まるわかり」になるんですよ。ある意味、農民や商人より窮屈で苦しい生活だったんですね。酒でも飲まなきゃやってられなかったと思います。

「武士は食わねど高楊枝」という言葉がありますが、「貧しい食事」や「武士の内職」といった苦しい家庭事情は【たそがれ清兵衛】で既に見ました。でも、今回はちょっと違うんです。今度は農家の娘を使用人として雇ってるんですよ。お小姓さんは前回と同じですが、今回の片桐の方が清兵衛より若干ましな暮らしぶりなのです。「やもめ」という点は同じですが、子供がいない分、若干余裕があるわけ。

だけどね、清兵衛の場合は『子供のためになんとか』という気持ちで物語が成り立つんだけど、今回はそれがない。そんな片桐に家老から下された命令は清兵衛に下された命令より厳しいものだったのですが・・・(おっと、この先は言えません)

今回のストーリーは【たそがれ清兵衛】より好きですね。「ひねり」が加わって、より味わい深いと感じました。最後の最後まで【隠し剣 鬼の爪】の意味がわからないのも◎です。(ネタバレ記事は絶対読まずに観た方がイイですよ)

最後に評価ですが、【たそがれ清兵衛】に A をつけたことを前提に考えてみます。ストーリーは今回の方が、ほんのちょっと上。永瀬正敏と真田広之は同点。だけど、松たか子と宮沢りえを比べると大きな差がついちゃいます。それは好みの問題かもしれないけど、病で伏せっているシーンで顔が痩せてなかったのが、かなり気になったんですよ。メイクで目の下にクマを入れてたけど、それだけじゃ物足りないっす。

どうしてもこれだけ映画を観ちゃうと目が肥えますからね。たとえば、【戦場のピアニスト】のエイドリアン・ブロディーは、元々痩せている上に徹底的な減量をしました。飢餓状態を演出するために。(この作品でアカデミー主演男優賞を受賞)

Amazon.co.jpアソシエイト【戦場のピアニスト】の終盤、それほど高くない壁をよじ登るシーンがあるんですが、ブロディーは手足に力が入らなくて何度も失敗したんですって。もうね、見てる方がつらくなるような演技の連続でした。そういうのを見てるから物足りないんです。もう少し顔が痩せた女優を選ぶべきだったかな? ちょっと松たか子は健康的すぎましたね。

あとは、【たそがれ清兵衛】と同じような設定なので「新鮮味」に欠けたのがマイナス。それまで【たそがれ清兵衛】のような映画はまったくなかったんです。だから本当に新鮮だったわけ。ということで、【隠し剣 鬼の爪】の評価は【たそがれ清兵衛】より2段階落ちの B+ ということにしましょう。(それでもオススメ・レベル)

最近は時代劇を観る若い人っていないだろうけど、若い人にも是非オススメしたいです。かなりリアリティーがあるし、笑えるところもあるから大丈夫。「温故知新」ですよ「温故知新」。こういう作品を観ると現在の自分がどれだけ恵まれた時代を生きているかがわかって、チョット幸せな気分になれるんです。ヒーロー物を観てスカッとするのもいいけど、たまにはこういう作品をはさんだ方がいいな。うん!

たそがれ清兵衛

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