「砂と霧の家」の感想

公開時期が悪かった

2004年11月12日

砂と霧の家】は期待してなかったが、予想外に良かった。最後のたった一言「NO」のために2時間を費やすヒューマン・ドラマだが・・・この一言は普通だったらどう考えても「YES」でなければおかしいのだ。

この映画は最初と最後が同じシーンになっている。なんでこんな構成にしたのか見終わった直後は謎だったが、一晩寝たら監督の意図が完璧にわかった。どうしてそうなのかを考えたとき、はじめて素晴らしさに気付く仕掛けなのだ。だからボケーッと観てるとテーマがわからないだろう。バカでも大喜びするような映画じゃない。

【血と骨】、【オールド・ボーイ】、【コラテラル】、【いま、会いにゆきます】など、強敵がズラリの今じゃなかったらもっとクチコミで観客が入ったと思うな。2004年アカデミー賞3部門ノミネートはダテじゃないよ。感動的な秀作なのにもったいない。これはみんなも観るように宣伝しなくては・・・

それにしてもジェニファー・コネリー(ショーン・コネリーの娘)は久しぶりに見たぞ。去年、【ハルク】に出ていたはずだが、そのときは見逃してしまったんだ。いくつになったのかな? 早速ホームページでチェックしてみよう。予想では32、3歳だけど・・・1970年12月12日、ニューヨーク州生まれか。だいたい予想通りだったね。うーん、胸が大きいなぁ。日本だったら「巨乳」と言われそうだ。小池栄子より大きいだろう。エロいシーンもあるのだろうか?

ちゃんとあるから心配するなっちゅーの!

カリフォルニア州マリブ。ここはロスアンゼルスの郊外で、有名なマリブビーチがあるところ。海沿いの傾斜地に建つ家。ジェニファーは独りだ。夫は8ヶ月前に家を出て行った。おそらく離婚したのだろう。でも、親類にそのことは知らせていない。

家の中は散らかり放題。食器はシンクに浸けっぱなし。玄関はドアの隙間から突っ込まれた郵便物が封も切らないまま放置されて足の踏み場もない。

お金はほとんど持っていないようだ。きっと夫が出て行ったショックから立ち直れないのだろう。ジェニファーは社会から孤立して引き籠もっているらしい。残されたのは父の遺産のこの家だけ。この家は思い出のいっぱい詰まった大切な家。

うまいなー。状況が言葉なしでもわかるように映像で淡々と説明される。導入部でラストの悲劇が暗示されたあとは、カメラワークと一本の電話だけでジェニファーの窮状がわかる。そこへ突然・・・

このあとジェニファーは、あるイラン人の家族と関わりを持つことになる。ちょっとした手違いで大切な家を奪われてしまうのだ。

そこで突然釘を踏み抜いてしまうシーン。

「ぎゃっ!」

アタシは思わず座席から10センチぐらい飛び上がった。スゴイ過剰反応だったから、きっと後ろの人もビックリしただろう。何十年も忘れていたが、これはアタシのトラウマらしい。

『そう言えば・・・』

子供の頃の記憶が突然甦ってきた。友達と缶蹴りをしていたとき、逃げようとした友達が廃材置き場で釘を踏み抜いてしまったのだ。あの大泣きと鮮血は今でも忘れられない。だから映画って恐いんだよね。映像で子供の頃のイヤな体験を急に思い出すことがある。おととい見た【血と骨】は見応えがあったのでアタシの感覚では B+ にしても良いのだが、B+ 以上はアタシの基準でオススメってことになっているからマズイんだ。下手にオススメしてトラウマでヒドイ目に遭う人がいると困るからね。だから評価は B に留めておいた。かなり凄惨なシーンがあるから。

おっと、脱線してしまった。話を元に戻そう。ジェニファーが釘を踏み抜いたところで優しいイラン人の奥さんが、とても親切にジェニファーを手当てしてくれる。立場上この家は譲れないが、イラン人の家族は決して悪い人達じゃない。悪いのは・・・これがテーマだな。

おそらくアメリカの行政機関は人数ギリギリで運営されているのだろう。日本より公務員の質が低くてミスも多いはずだ。この映画はそういう社会問題をいくつも組み合わせてテーマにしているんじゃないかな? 他にも人種問題、銃社会、訴訟社会、離婚が日常茶飯事などの問題が複雑に絡み合ってストーリーが展開していく。

これは極上の社会派ドラマだよ。アメリカ人ならこれを観て何も感じないはずがない。どれもこれも身近なところで思い当たるだろう。ちょっと日本人向きではないかもしれないが、それほど遠くない将来に日本でも起こりうる問題をテーマにしているのだ。

主演男優のベン・キングスレーもいいねぇ! どこかで見た覚えがあると思ったら、今年の夏に公開された【サンダーバード】に悪役として出ていたオジサンじゃないか。

サンダーバード[実写版]

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今回の役柄はアメリカに亡命したイラン人のベラーニ大佐。性格はかなりと言うか、病的なまでに見栄っ張り。とても頭が切れ、恐いほど記憶力がいい。家族をとても愛していて、親子の絆はアメリカ人に見習わせたいほどだ。でも、昔のクセでついつい誰にでも命令口調になってしまうのが玉にキズ。この人物の描写も実にスマートなんだよね。言葉では説明しないんだ。映像を見れば誰にでもわかる。この監督はうまいよ。物凄くセンスがいい。

マリブビーチダイエットバー

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(チョコバーでおいしくプチ断食ダイエット!)

突然変なコマーシャルが入ってビックリしたかな? でも、チョコバーはこの映画で重要なアイテムなんだ。チョコバーを食べるシーンに出てくる数字を覚えれば、そのあとの展開が容易に飲み込めるだろう。このシーンは是非、目を皿のようにして見てほしい。ここをボケーッと見てると、ベラーニ大佐が何を考えているか良くわからないんだ。映画の中では SNICKERS だけどね。(今、SNICKERS はプレゼントキャンペーン中だってさ。あとでのぞいてみな)

評価は A- にしようかな。悪いところは特に見当たらない。とても感動的な話で、俳優の演技も良かった。ロケーションもいい。そして何よりも原作の「砂と霧の家」がいい。この物語を2時間で味わえるのだから、是非オススメしたいと思う。今現在公開されている映画の中ではインパクトに欠けるので減点したが、心にしみる映画であることは間違いない。