シンデレラマン

セカンドチャンス

2005年9月20日

この映画は大恐慌時代の話で、ジム・ブラドックというボクサーの伝記である。主演のラッセル・クロウが40代なので、途中ウソっぽく感じるところもあるが、よく考えてみるとジョージ・フォアマンの例があった。フォアマンは一度引退したあと、10年もブランクがありながら45歳で史上最年長チャンピオンに返り咲いたのだ。

だから、これは奇跡のような物語とは言えない。フォアマンの再挑戦の方がよっぽど奇跡的だろう。実際、当時の新聞は「シンデレラマン」と書き立てたが、フォアマンほどブランクが長かったわけじゃないのだ。株で大損して食うや食わずの日雇い労働者に転落したブラドック。そこにある日、降って湧いたようなチャンスが巡ってきて・・・

「セカンドチャンス」。第一のキーワードはこれだ。「アメリカには一度堕ちるところまで堕ちても這い上がるチャンスがある」と言いたいのだろう。万分の一もないチャンスをものにした男のシンデレラストーリー。こういう話をアメリカ人は好む。

そして、第二のキーワードは「家族愛」。現代の日本だったら「実家に帰らせていただきます」で終わりだと思った。「これでもか!」というぐらい家族愛を臭わせるので、日本人が見ると「クサイ」と感じるかもしれない。良くも悪くもアメリカ的だ。(アタシは「クサイ」と感じた)

ネタ切れ?

アメリカは日本に比べると歴史が浅い。しかも、映画になる時代がとても限られている。西部開拓時代はインディアンを殺しまくった時代だからマズイ。映画界にとって日本はアメリカに次ぐ大市場なので太平洋戦争も好ましくない。だからネタ切れに陥りやすいのだ。

大恐慌時代や南北戦争が過去の時代背景として好んで選ばれる理由はそこにある。それ以外というと、現代、近未来、SFファンタジーしかないと言ってもイイぐらいだ。ベトナム戦争の映画も出尽くしたという感があるし、最近の戦争や同時多発テロは記憶に新しいので、これまた題材として扱いにくい。

だから「ラストサムライ」みたいに日本人が平気で英語をしゃべる映画を作ったりする。変だ! 日本人が見るとやっぱり変だ。アメリカ人は日本人が映画の中で英語をしゃべるのに違和感を覚えないのか? 現代の話ならまだしも、100年以上前の話で日本人が英語をしゃべるというのは、いくらなんでも傲慢だろ。

今日はじめて見た「SAYURI」(原題:Geisha)の予告編も違和感の塊だった。だいたい芸者役に中国人はない。いくらチャン・ツィイーが有名でも、そりゃーあんまりだ。御都合主義にも程がある。

見どころ

「シンデレラマン」の見どころは、レニー・ゼルビガーとラッセル・クロウのシェイプアップぶりと、ボクシングのシーン。特に「ブリジット・ジョーンズの日記」で、あれだけ太っていたレニー・ゼルビガーが、極貧状態で痩せ細っていくところは見物だ。最初の方ではアゴの下にタプタプしたお肉が見られるが、後半になると顎の線がシャープになっている。ラッセル・クロウも「マスター・アンド・コマンダー」の艦長役とは別人に見えるほど体重を落としていた。

ブリジット・ジョーンズの日記 きれそうなわたしの12か月

ブリジット・ジョーンズの日記 きれそうなわたしの12か月

マスター・アンド・コマンダー

マスター・アンド・コマンダー

それから、もうひとり重要な役を演じている俳優がいる。それはジム・ブラドックのマネージャーを演じているポール・ジアマッティ。この映画がアカデミー賞を取るとしたら、ポール・ジアマッティに助演男優賞をあげたい。実に見事な演技で、主役の二人を食ってしまうほどのハマリ役だった。

サイドウェイ特別編 (DVD)

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ポール・ジアマッティ主演で今年の春、公開された「サイドウェイ」は必見だと思う。これを見ればアカデミー助演男優賞をあげたくなる理由がわかるだろう。低予算でこれだけ面白い映画も珍しい。

最後に「シンデレラマン」の評価だが、個人的には B だ。でも、ボクシングや K-1 が好きな人は多分気に入るから、格闘技が好きな人に限定すれば B+(オススメ)。思わず客席でスウェーしてしまうほど強力なパンチが飛んでくる。(映画館で見るとかなりの迫力)

けっこうドキドキするから最後まで眠くはならないだろう。