春の雪

三島由紀夫

2005年11月15日

映画を観たあと、三島由紀夫が自決した日のことを思い出した。こんなことを書くと年がバレるが、それも仕方あるまい。あれは確か、号外が配られるほどの大事件だった。1970年11月25日。これが三島由紀夫の命日である。

アタシは大学で文学を専攻していたが、これまで三島由紀夫の作品は何一つ読んでいない。それは何故かというと、三島を作家としてではなく、クーデターを企てた右翼思想家として知ったからだ。小学生の頃に「あの事件」が起きたのだから、そう思い込んでも無理ないだろう。小学生にはとても理解しがたい事件だった。

親も三島由紀夫については何ひとつ語らなかったし、入学した中学、高校でも三島文学の勉強はしていない。「君が代」を歌ったり、「日の丸」を掲揚することのない学校だったから、三島由紀夫について学生に教えることはタブーだったのかも。

映画は悪くなかった。かと言って涙がこぼれるほど感動もしなかったが、150分の上映時間は長いと思わなかった。それは構成が良かったせいだろう。清顕(きよあき)が恋に目覚めるまで、映画の中でもある程度の時間が必要だったのだ。ちょっと前置きが長いと感じる人もいるだろうが、前半を端折ったら元も子もない。

映画の最後に、原作:三島由紀夫「豊饒の海」(第一巻)と出たので、「豊饒の海」が何巻まであるのか調べてみた。すると、第一巻が「春の雪」で、全四巻であることがわかった。この長編小説は清顕が勲、月光姫、透というまったくの別人に輪廻転生していく物語らしい。そして、その輪廻転生を最後まで見届けるのが、清顕の学友(学習院の同級生)・本多の役目なのである。

そう言えば、清顕(妻夫木)の背中、と言っても脇の下に近い辺りに特徴的な三つのホクロが並んでいた。(ラブシーンのとき何となく印象に残る)おそらくあのホクロが輪廻転生の印なのだろう。アタシにはそうとしか思えなかった。

この作品は膨大な時間をかけて練り上げられているようだ。セリフもシーンもひとつひとつにまったく無駄がない。説明的なセリフなどないのに、当時の華族社会がどのようなものだったか容易に想像できる。そして、実に文学的な見せ方をしてくれる。

三島由紀夫は「豊饒の海」を書き上げた直後に死を選んだ。ということは、自らの輪廻転生を信じていたのだろう。凡人には理解しがたい死に方だが、三島由紀夫を人々の脳裏に焼き付けるためには有効な手段だった。

最後に映画の評価だが、久々に原作を読みたくなったので A- にしておく。やや、向き不向きがありそうなのでマイナスを付けたが、老若男女を問わず、万人にオススメできる作品だ。特に中学生や高校生に観てほしい。なるべく若いときにこれを観るといいだろう。何を感じるかは人それぞれだが、これを観れば恋の失敗を避けられるかもしれない。

春の雪 公式サイト

『春の雪』の雅(みやび)世界を探し求めて(Mapion Blog)←オススメ

春の雪~清顕と聡子の追想物語~