また来週

マヒマヒ・ドルフィン?

いやぁー、それにしても強い引きだった。Tomy はシイラをナメていたね。前日見たビデオでは、これほどパワーのある魚だということはわからなかった。ビデオに出てきたRISE(平塚のプロショップ)の原田さんがシイラをオモチャ扱いしていたので楽勝を決め込んでいたのだ。1匹釣ったら『もう十分、早く帰ろうと』思うほどの激闘だったよ。

終わってみたらスネをどこかにぶつけたらしく、右足に赤いアザができていた。ファイト中は気付かなかったが、かなり“バーン”とぶつけたようだったね。

でも、不思議と痛みは感じないのだ。きっと脳内麻薬が大量に分泌されたからに違いない。ノル・エピネフリンだったかベータ・エンドルフィンだったか覚えてないが、とにかく脳内麻薬というものが存在するのである。この場合、分泌された成分は新種の脳内麻薬だと思う。Tomy が発見者だからマヒマヒ・ドルフィンと名付けることにしたい。

ルアーを外す時、ちょっとシイラの歯が指先に触れてしまって出血したのだが、マヒマヒ・ドルフィンのお陰でこの痛みもしばらくは感じなかった。本当に久々の大興奮だったね。カナダの Steelhead 以来かな?

カナダのスキーナ川水系に行ってフィッシング・ロッジに1週間滞在し、ガイド付きで Steelheading をすると最低でも40万円はかかる。もしその40万円を庄治郎丸につぎ込めば、50回もシイラ船に乗れる計算だ。どちらが得か考えてみると…。

うぅーん、庄治郎丸の勝ち!

だって、庄治郎丸はTomyの家から25分だもん。平日ならその日の天気を見てからでも行ける気軽さがある。カナダの Steelhead も1度は釣りに行くことをオススメするけど、行ってみないと状況がわからないから、ちょっと危険だ。

Tomy は過去3回カナダに行って、トータル18日 Steelheading をした。ランディングはトータル9匹だから2日に1匹しか釣っていない。運もあるんだけどね。「1週間前に来た人は10日で40匹ランディングした」なんていう信じられないような話をガイドから聞かされたこともあった。

でも、苦労して釣った Big One は何者にも替えがたい。釣った時の水の匂いや風の色、ガイドとのかたい握手、ピンクの鮮烈なスラッシュマーク、銀色の SLBM が垂直に水面を割って空中に飛び出すシーン、そして心の底から沸き上がる感動。それらが脳裏に100年プリントされるのだ。多分一生忘れないよ。

そう考えてみると、シイラ釣りと Steelheading を魚の引きだけで比較するのは無理があるのかな?

Aileと邪悪ベイトおっとっと、ちょっと脱線したね。シイラ釣りに話を戻そう。まずは、この時使っていたルアーについて考えてみたい。シイラがバクリと食いついたのは、Aile MAGNET 12.5cm 26g マイワシ・カラーだった。

コイツは重心移動だから、よく飛ぶ。レーザーフィニッシュでリアルだし…。

最初は田中君や菅原君のルアーを追っていたシイラが、結局選んだのはTomyが何の気なしに選んだミノーだった。かなり早巻きだったが、歯を食いしばるほどグリグリは巻いていなかった。トゥイッチ・アクションは入れないでアクションはルアー任せ。

つまり棒引きだったわけ。“ミノーの棒引きにまさるものナシ”。これは Tomy の持論だけど、シイラにも通用したみたいだぜ。“下手なトゥイッチ休むに似たり、ミノーの棒引きにまさるものナシ”。うーん、今日は冴えてる! 文学的ぢゃー!

その他にシイラを魅了したルアーは、写真下のジャークベイトだった。こいつは必殺ルアーみたいだよ。誰かのルアーを追ってきたシイラがボートに近付いてきたら、このジャークベイトをシイラの目の前に投げて少し沈め、ギュイーンとジャークしてやる。するとこのルアーは不規則に方向を変えて急激にヒラを打つんだ。まるで生きているみたいに…。

シイラ側から見れば、まさに邪悪ベイト。コイツのアクションを見せつけられると襲いかからないではいられないらしいぞ。売り切れ店続出だから急げ!

てなわけで、Tomyが釣れたもんだから、いっせいに皆さんルアーをミノーに付け替えたようだった。船は沖に向かって突き進む。時折3メートルぐらいの大波が来ると舳先に乗っている人が空中に舞い上がる。

“ザッパーン”波しぶきがスゴイ。

今日も湘南の海は大きくうねりはじめた。田中君の表情が曇る。どうも彼は風男ラシイのだ。このあいだから彼が平塚に来ると海が荒れてしょうがない。まだ、平塚港を出て40分しかたたないけど、Tomyは「ほんじゃ、波が高いから帰ろうかぁ」なんて言いはじめた。

身勝手なヤツである。余裕のテンパリ・タバコをふかしながら Tomy は田中君に大ドモのポジションを譲って休憩していた。実は腕がしびれて投げられなかったのだけど…。

○ο。ーч(^。^)

船は潮目を探していたのだ。風が強くて鳥山が見つからないので、漂流物がたまりやすい潮目に沿って移動していく。

グウォン・グウォウォウォウォウォー!!

船のスクリューが逆転して急にスピードが緩んだ。見ると、インストラクターが船首で手を高くあげている。シイラを発見したらしい! 次々に船首からルアーが投じられて、船中がにわかに殺気立つ。

Tomy が様子をうかがっていると、1メートル10センチはありそうな大物が船の目前まで来ているではないか! シイラは興奮すると黄色く変色するのだが、コイツはまさにまっ黄っ黄のイエロー・サブマリン状態だった。

怒り狂っている。

石井インストラクタールアーが次々に、まるでオヒネリのように飛び交うと、そのシイラは声援にこたえるように体をくねらせて踊った。みんな生つばゴックン!

そして、インストラクターが投げたジャークベイトがシイラの目前でギュイーンとヒラを打った瞬間! そいつははじまった!!

「フィッシュ!!」

「ヒューヒュー!!」

物凄いショーである。インストラクターは細腕ながらロッドを巧みに操って船べりを走った。堺船長もギャフを持って走り回る。左舷から船首を経由して右舷の最後尾まで、走る走る。飛ぶ飛ぶ。スゴイスゴイ。

「後ろで勝負させてくれー!」

もう少しのところまで来てはギュイーン、そしてバッシャーン。猫や鳥をいじめる中学生に見せてやりたい。これこそがゲームなのだよ。やるか、やられるか、際どい勝負こそがゲームなのだ。一方的なイジメはゲームじゃない。相手にも勝つチャンスがあってこそ、ゲームは成り立つものなんだ。

「あー、やっちゃったー!」

ほらね、勝負の世界ではこういうこともあるのさ。ラインブレークでシイラの勝ち。だけど、このゲームはまだまだ終わっていなかった。何と、同じシイラが他のジャークベイトにアタックしてきたのだ。

シイラは怒りが納まらないラシイ。

合計20分にも及ぶファイトだった。1匹のシイラが繰り広げる Big Game。見ごたえ満点だったよ。43人乗りの船を合計2周もして、ようやくギャフで引きずり上げたんだ。本当に凄いパワー。腕を鍛えないと、とてもじゃないけど止まらない。みんなも毎日腕立て伏せしなくっちゃ。

mahi2 は釣るためにトレーニング器具を買って毎日腕を鍛えているんだってさ。頭の中でシイラが廻りだすとそこまでしなくちゃ居ても立ってもいられないラシイ。

恐ろしい魚だね。脳内麻薬マヒマヒ・ドルフィン。コイツをひとたび注射されれば、あなたも狂いだすんだよ。

マヒマヒとは、ハワイの言葉でシイラのことです。ドルフィンも釣りの世界ではシイラを指すんですよ。