ギンギラギンに絶え間なく

久里浜でカワハギ釣り

1997年12月23日

ギンギラギンにさりげなく(MIDI)

♪ギンギラギンに 絶え間なくぅー♪

♪そいつが おーれの やりかたぁー♪

♪ギンギラギンに 絶え間なくぅー♪

♪絶え間なくぅー 誘う だけさぁー♪

I want you HAGE, I need you HAGE,

I want you HAGE, カワハギッ!

I want you HAGE, I need you HAGE,

I want you HAGE, カワハギッ!

HAGE がカワハギの別名だということは皆さんご存知でしょう。ローマ字で書いたのはカタカナの2文字に過敏症の人がいるのではないかという配慮なんだ。Tomy のまわりにも結構多いから…。

禁漁になったので芦ノ湖は一休み。今日はカワハギ釣りのお話だよ。ネットを通じてすっかり釣り友達になったなまむぎさんと Chat で話をしているうちに、いつの間にか話がまとまったのだ。

カワハギ仕掛け

夏に城ケ島の岸壁でカワハギを釣ったことはあるが、乗合船でカワハギを釣りに行くのは初めての経験。自信がないので Tomy はご覧のような仕掛けをJ屋さんで買ってしまった。その他にもギンギラギンのティンセルが付いたタコベイトとか、キラキラシール付きのオモリなども仕入れてきたのでカワハギ釣りの歌が閃いたわけよ。

カワハギは好奇心が旺盛な魚だというので、今回は思いっきり派手な仕掛けを作ってみたんだ。「これでもかっ!」って感じでね。腕がないから仕掛けで何とかカバーしようというわけ。

しかし、仕掛を買ったあとで今度は本屋さんに行って釣り雑誌を立ち読みしたら、カワハギ釣り名人の仕掛けはいたってシンプル。集魚板もタコベイトもついていなかった。いったいどっちがホントなんじゃい?

朝6時、Tomy となまむぎさんは久里浜のみのすけ丸に到着した。出船は8時だが、艫のいい席を確保しようというわけだ。しかし、上には上がいるもので、はるばる松戸からカワハギ名人が駆け付け、すでに最後尾の席は埋まっていたのである。これほどのキチガイがいるということは、なかなか腕のいい船長なのだろう。

あいにく朝からみぞれ混じりの雨が降っていて北風も冷たいが、それでもけっこう大勢人が集まってカワハギの船が2艘とアマダイの船が1艘が出ることになった。

平作川にて

上の写真は船が平作川を進んでいるシーンだが、この船は運転席が橋の下を通るときに折り畳まれて船に格納されるようになっている。うっかり竿を船べりに立てたままキャビンで寝てしまうと釣り場に着く前に竿がポッキリ折れちゃうから気をつけよう。実は、なまむぎさんが Tomy の竿を竿掛けから下ろしてくれたから助かったのだが、Tomy はキャビンで仰向けに寝ていてあせったのだよ。

キャビンの天井が透明の強化プラスティックになっていたんだが、突然真っ暗になったと思ったら、橋の下を通過していたんだ。2メートル以上の竿を船べりに立てていたら間違いなく穂先が橋に当たってしまう。川から出ていく釣り船の場合は注意が必要だということがはじめてわかったね。

30分ぐらい走るというのでキャビンで雨風を避けていると、みのすけ丸は猛スピードで剣崎沖に向かっていった。時折すごい波しぶきがキャビンに降り掛かり、風がゴーゴーいっている。

『ヒドイ日に来ちまったな』と思ったが後の祭り。そう言えば、初めて庄次郎丸のシイラ船に乗ったときも海が荒れ、たった20投しただけで帰ってきたんだ。どうも今年は初めて乗る船にツキがないみたい。もっと天気のいい日に楽しみたかったよ。

さあ、釣り場に着いた。さっそくギンギラギンの仕掛けにアサリのむき身をつけてワクワクしながら投入だ。しかし、水深が50メートルもあって持ってきた25号のキラキラオモリは少々軽すぎた。10メートルぐらいの風が吹きつけるので釣りづらいのなんの…。

底を取るのがやっとでカワハギの微妙なアタリなんかわかりゃしない。突風で穂先があおられると『キタか?!』と思ってしまうのだ。しかも、カワハギは巧妙にエサだけ食べて仕掛けを巻き上げるといつもハリは素っ裸。たまにアサリの切れっぱしがついていることもあるが、硬いところだけだ。

たまーに、カワハギのアタリらしきものも感じるのだが、うまくハリ掛かりしない。カワハギのおちょぼ口の中にハリ先が入っているのは、ほんのわずかな時間なのだろう。聞きしに勝る手強さである。

でも、最後尾に座った名人はそんなひどい状況下でも最初の1時間で8枚も釣っている。なまむぎさんが2枚、Tomy はゼロ。クヤシィー!

雨はだんだん小降りになったのだが、逆に風は勢いを増していった。Tomy はその後も12時を過ぎるまでノーフィッシュ。体感温度はマイナス5度ぐらいだろうか? アサリのむき身をハリにつけるのが苦痛になってきた。手先が麻痺してだんだん動かなくなっていくのである。

何度も何度もエサだけ取られ、Tomy は落ち込んでいく。カワハギの歌を口ずさんでも、まったく元気が出なくなってしまった。手先の麻痺はさらに進行し、小指・薬指・中指がまず動かなくなり、続いて親指が固まって、動くのは人さし指だけになってしまった。

本当に脳性麻痺の苦痛を味わうようだったよ。「あぁ〜、うぅ〜」とか呻きながらアサリのむき身と格闘するのである。アサリの柔らかいところにハリ先を隠さなければ釣れないので、ただでさえエサづけは難しいのだ。Tomy は進行する筋ジストロフィーと必死に闘いながら2分がかりでエサ付けをしなければならなくなっていた。

そして、「もう帰りたい」なんていう弱音も吐いてしまった。既に彼の腕は手首から二の腕にかけても麻痺が進行していたのである。

「て・手首がぁー!」

本当に手首が動かなくなった。リールは何とか巻けるのだが、麻痺がこれ以上進行してヒジまで侵されればそれもできなくなってしまう。フニャフニャして滑るアサリのむき身が憎たらしく思えてきた。

『釣りってこんなに苦しいものだったのだろうか?』

『ボウズだけは避けたい!』その思いだけが何とか彼の手を遠隔操作しているようだった。そうだ、腕を動かしているという感覚がないのだ。既に右腕は肩にぶら下がったロボットアームのようだった。肩を回して何とかアサリが入ったザルまで腕を伸ばし、遠隔操作でアサリをつかむ。そして、まだ動く左手に持ったハリの方を動かして、アサリにハリを埋め込んでいくのだ。

『何でこんな苦労をしなきゃならないんだ?』という疑念に支配されながら…。

持ってきたオニギリを食べる気もしない。冷えきった飯粒はもはやノドを通らなくなっている。涙はチョチョ切れ、声も出なくなる。それでも隣のなまむぎさんはこの時点で6枚ほどの水揚げ。信じられない。

どうも竿の調子があまり良くないらしい。風さえなければ持ってきた竿でもアタリがわかると思うのだが、ちょっと柔らかいのでわからないのである。気力も尽きて、そろそろボウズを覚悟したその時だった!

キタッ! 確かについている。途中で2度ほどクンクンと小気味良い絞り込み。上がってきたのは15センチほどの小物だったが、この時期としては平均的なサイズだろう。うれしいと言うよりホッとした。

獲物『これで帰れる』・・・そう思った。

その後、Tomy はトラギスを1匹追加して納竿。海上は15メートルの風が吹き荒れ、これ以上は危険になってしまったのだ。

船長の「今日はこれで上がります」の声は、まるで天の助けのように感じられた。なまむぎさんカワハギ9、トラギス2、ヒメジ1。Tomyカワハギ1、トラギス1。

あまりにも寒く、つらかった1日。カワハギ釣りはもっと天気がいい日に再挑戦したいものだ。Tomy の獲物はなまむぎさんのクーラーに納まり、京浜急行に揺られてなまむぎ家に届けられた。