それぞれのスーパードリーム

【巨人の星】の名場面(その1)

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1998年2月19日

さて、試練ばかりの飛雄馬にも、たった1回だけ美奈さんとのロマンスがあったのをみなさんはご存知だろうか? 子供達が『飛雄馬にもやっと春が来た』と思ったのもつかの間、瞬時のロマンスは無惨に引き裂かれてしまったのだ。原作者の梶原一騎は鬼だった。漫画に悲壮感を与えるため、恋人の美奈さんを黒色肉腫で殺してしまったのだ。

『あのときの飛雄馬はかわいそうだったなぁ』本当に泣いたよこれには…。

日本中の小学生が影響されていたが、中でも Tomy 少年はかなりの重症だった。体にエキスパンダーを巻き付けて「大リーグボール養成ギブスだ!」なんてカッコつけたはいいが、バネで皮を挟んで痛い思いをしていた。

前にも【巨人の星】の話をちょっとばかりしたのだが、そのときは同じシーンを「これでもか!」というぐらい何度も見せられてテレビの前で悔しがったことを書いた。そこで今回は、視点を大人の目に変えて名場面の解説をしてみようと思う。当時の小学生と今の小学生がどれぐらい違うかをしばらく考えてもらいたい。

名場面その1:地獄のウサギ跳び

巨人の星の影響でウサギ跳びは足腰の鍛練に欠かせないものと当時は考えられていた。Tomy 少年も中学まではウサギ跳びをよくやったものだ。ウサギ跳びをやると、だんだんモモがだるくなって熱を帯びてくる。そして、しまいには歩くことすらできなくなってしまうのだ。ウサギ跳びは強烈な筋肉の酷使だった。

確か昭和40年代の終わりに“ウサギ跳びは逆効果だ”という学説が一般化するまで、少年達は体育の授業でウサギ跳びをやらされていたと思う。最近少年達の足が長いのはウサギ跳びをやったことがないからに違いない。

名場面その2:ちゃぶ台返し

父ちゃんの名前は星一徹。まさに頑固一徹の戦中派だ。父親の権威は絶対的で、反抗なんか決して許されない。怒るとちゃぶ台をひっくり返して威厳を見せるのだが、今そんなことをしたら逆に大人げないと思われてしまうだろう。

父親の権威が微塵もない誰かさんとは大違いだ。アパートのベランダでひとり寂しくタバコを吸うホタル族は見習ってほしい。タバコは煙が見えてこそ味わいがある。「けむい」なんて言わせない父親の権威を回復しようではないか!

名場面その3:驚異のひとりキャッチボール

このシーンを覚えている人は多いだろう。長屋の壁は板切れ1枚、そこにボールがやっと通るぐらいの穴があいていて、飛雄馬はアニメーションのように*隣の壁に跳ね返ったボールをキャッチしていた。そこに当時の巨人軍監督、川上哲治が通りかかって飛雄馬の才能に驚かされるのだが…。このシーンは大人になってから考えるとおかしくて仕方がない。

正確なコントロールを物語る表現としてはいいだろう。でも、安普請に野球のボールが通る大穴があいていたら冬はさぞかし寒いはずだ。それに、うまくなるまではボールが返ってこないから何回も外にボールを拾いに行かなければならない。(貧乏だからボールはひとつしか持っていなかったのだ)

冷静に考えるとばかばかしくなるが、これを真に受けた Tomy 少年はアパートの壁でひとりキャッチボールをして「うるさーい!」と怒鳴られてしまった。コンクリートの壁でもうるさいのだから隣の長屋に住んでいる人はたまらなかっただろう。

註:その後の調べで、飛雄馬がボールをぶつけていたのは、隣の長屋でないことが判明した。真実は次ページに・・・