それぞれのスーパードリーム

【巨人の星】の名場面(その2)

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1998年2月19日

名場面その4:「日本一の日雇い人夫です!」

これは Tomy にとって最も印象に残るシーンだ。

星一徹は貧乏だったが飛雄馬を甲子園に送るために日雇い仕事でコツコツと貯金をしていた。何とか飛雄馬を甲子園に行かせるため、無理をしてでも私立高校に進学させなければならなかったのだ。明子姉ちゃんも飛雄馬のためにいつも同じ服で我慢してたしね。(セル画の節約という噂もある)

そして、青雲高校の入学試験。面接で飛雄馬は答えに戸惑った。

「お父さんの職業は何かね?」

・・・飛雄馬はしばらく躊躇したあと

「日本一の日雇い人夫です!」

と、コブシを握りしめながら言い放ったのである。

Tomy 少年は当時、日雇い人夫の意味をよく知らなかったから、このセリフに圧倒されたのだよ。『日雇い人夫って偉いんだな』『日雇い人夫はサラリーマンよりカッコイイらしい』多分そんなふうに感じていたと思う。

これは笑い話だが、もうひとひねり考えてみよう。そうすると、日雇い人夫がサラリーマンよりカッコイイという感覚は実に現代的だということに気づくのだ。男芸者と言われるほど卑屈なサラリーマンより、日雇い人夫の方がよっぽどカッコイイ。

口先だけで昇進して実は仕事のできないAや、せっせと貢ぎ物をして点数を稼いでいるBのことを考えてごらん。『サラリーマンなんて最低だ!』と思うだろう。それに比べて日雇い人夫は自らの肉体だけで金を稼ぎだすんだから、偉いじゃないか。改めて Tomy 少年の鋭さに驚いてしまったぜ。

そんなことを考えはじめたら、『今回の題名は【日本一の日雇い船長】にしなければ!』という結論に達した。しかし…

【日本一の日雇い船長】という題名を付けるとすれば、乗員全員が大満足でなければならない。思いつきはまあまあだが、いかにも荷が重い題名である。けっきょく【日本一の日雇い船長】はボツになったのだが、その理由は簡単に想像できるだろう。一言で言えば悲喜こもごも。大満足の人もいれば不完全燃焼の人もチラホラ見られたわけだ。

『じゃあ、こういう場合はどうすりゃいいの?』

『おお、そうだ! やっぱり題名にスーパードリームを入れよう』

『去年は【スーパードリーム凶風に沈む】だったから…』

『今年は【○○のスーパードリーム】がいい』

『…となると、【それぞれのスーパードリーム】あたりが無難だね』

“それぞれの”という5文字を加えることによって、いろいろなことが想像できるはずだ。大物を釣り上げてスーパードリームが実現した人もいれば、夢破れ、ぞうきんマス一匹の値段を計算しながら家路についた人もいたに違いない。ポイント選択、メソッド、運・不運、感想もそれぞれ違っているだろう。そう考えれば、今回の題名はピタリとはまるのだよ。

釣り日誌の場合、結果がわからないうちに題名を付けるのは難しいが、ある程度は考えておかないと時間がかかってしまうのだ。【いきなりスペシウム】のときなんか題名をひねり出すだけで4時間以上もかかったからね。(釣りをしていた時間より長かった)

題名の良し悪しは書き手のセンスがもろに出る部分。なんとなく内容がわかる。あるいは全然内容がわからないけど読んでみたくなる。是非そういう題名にしたいものだ。簡単そうだが、これがなかなか難しい。

過去の釣り日誌からいくつか例を挙げてみよう。

【ミンミンゼミ事件】
これは原稿用紙40枚ほどの中編だが、最後の方を読むまで題名の意味がわからない。しかし、最後まで読めば背筋が凍りつくだろう。

【スーパードリーム凶風に沈む】
強風を凶風と書き換えたところがミソ。

【毎度アリッ!】
サンスイの案内で初めて夜のシーバス釣りに行ったときの話。慣れない夜のキャスティングでルアーロスト続出! サンスイの店員がルアーをロストするたびに言ったセリフ。

これはほんの一部だが、1回1回の釣行に題名を付けるというのは、なかなか面白いものだ。たったそれだけのことで何年も前の釣行を思い出すことができる。皆さんも是非トライして釣りの楽しみを広げてもらいたい。