1998年3月7日
まず九頭竜だが、ここは入りたかったポイントに先客がいた。エレキに切り換えて魚探をかけてみるが、なーんも映らない。
『SDC の時は良かったらしいけど…』
しばらく様子を見ていたが誰も釣れないので、またもや樹木園にアンカーを入れた。
『やっぱ渋いね』
雪解けの影響で水温は4.7度。2週間前より1度下がっていた。魚の気配はあるが口を使ってくれない。あれこれやってはみるものの…
かなり時間が経過
Tomy は退屈なので井の中君にキャスティングを指導しはじめた。
「ロッドを振りすぎてるよ」
「リリースしたら手首の力を抜いて竿先をスパッと止める」
「反動抜きって言うんだけどね、それをやればもっと飛ぶよ」
「バックスウィングを短く速く!」
「剣道でメンを打つ要領さ。もっとスナップ利かせて」
「えっ? 剣道やったことがない?」
「そうか、じゃあ見てな…」
そう言うと Tomy は井の中君にジャンプの船木選手のような低弾道のキャストを見せはじめた。肩と肘は動かさないようにして、肘から先の振り幅も30度以内に抑えるのだ。
「手首を素早くかえして慣性でロッドを曲げる…」
わかっているのかいないのか、しばらくやっていたら井の中君のキャストがまともになってきた。
「アッ! ひ・ひっとぉー!」
さっそくコーチングの成果があった。井の中君はルアーでの初ヒットをモノにしたのである。(1度目の釣行はジークさんと河口湖に行って完敗)
「やったじゃん!」
「あー、ロッド立てるな! 立てるなっ!」
「巻くなよっ! ワァ」
こういうことは魚が掛かってから言っても無駄である。初心者は“魚をいなす”ということができないのだ。今度教えるときは取り込みも教えなくちゃね。
井の中君はしばらく放心状態だった。初めてのヒットだから無理もないだろう。最初は誰でも『こんなので魚が釣れるの?』と思いつつロッドを振っているものだ。
群が回ってきたようなのでしばらくキャストを続けるがアタリなし。フライなら釣れたかもしれないが、ボートに3人乗っているのでルアーオンリーになっていたのである。
いいかげん飽きてきたので今度は成蹊に移動。フライマン達がどれぐらい釣るのかお手並み拝見じゃ!
おー、いるいる。人間がたくさん湖に突き刺さってる。じゃまにならないよう岸から十分離れてアンカーを入れ、まずはディープダイビング・ミノーで探りを入れてみた。
反応なし…、魚探にワカサギの群れが映ったがマスのアタリはない。たまーにマスらしい魚影も見られるが、水深8メートルではミノーが届かない。30分ぐらいしてひとりのフライマンにヒット! 約37人の熱い視線を浴びた。しかし、結局はバレてあとが続かない。
「何やってんだよ。それ逃がしたら、また2時間立ちんぼだぜ」
フライマンの友達がそんなことを言っているのが聞こえた。どうやらここも終わっているらしい。満水で立ち込みにくいのも影響しているようだ。結局40分ぐらい成蹊にいたが、井の中君にキャスティングを任せて Tomy と SIEG さんはトローリングの準備にかかった。
まったく気の短い人達である。回遊待ちの釣りは大の苦手なのだ。Tomy に影響されて SIEG さんも「最近キャスティングが面倒くさくなってきた」なんて言いはじめる。
トローリングはこういう時のためにあるんじゃなかろうか? 魚はいるけど反応が鈍い。ルアーを見るけど口を使わない。まさにこういう状態を打破するためにあるような気がする。
これは戦国武将の性格を表わしているというのだが、Tomyが考えるにトローリング好きの人間は第4の性格なのだ。
鳴かぬなら 鳴くやつ探そう ホトトギス
これよ、これ! こういう性格の人がレイクトローラーに向いていると思う。トローリングは、やる気のある魚を広い水面から探しだして拾い釣りしていく方法なのだ。次々に新天地を求めて旅を続けるフロンティア。悪く言えば“ひょっこりヒョウタン島”みたいな根無し草野郎。そういう性格がこの釣り方には合うのである。
一方、この釣り方に向かない人の例も挙げておこう。中でも代表格は釣り日誌に何度も登場しているなまむぎさんのような人だ。この人は同じ状況下で他人より多く釣ることを好むから、むしろ周りに人が大勢いた方がいい。
また、トローリングは向こうアワセなので、その点もつまらないと感じる理由であろう。確かに操船者以外は頭も技術もほとんど使わないから物足りないのも当然と言える。
しかし、世の中にはもっとトローリングに向いていない人もいるんだな。これは今回 SIEG さんに聞いた、ある釣り人の話なのだが…
その人のあだ名は“ちょうちん屋”。よく霞ヶ浦にバスを釣りに行くらしい。そして、ちょうちん屋は1日中水門のそばで釣りをしているという。広い霞ヶ浦でこの人の釣り場はたったの1平方メートル。何と1日中ジクジクとワームを踊らせているらしいのだ。
『移動に時間を使うなんて、あーもったいない』
多分ちょうちん屋の言い分はこうだろう。安全確実なポイントで1日中粘る。今の芦ノ湖にはちょうちん屋タイプが合うのかもしれないね。