ハルマゲドン的シイラ釣り

(1999.07.03)

ついにノストラダムスが大惨事を予言したナナの月がやってきた。空から何が降ってくるのだろう? 発狂したキム・ジョンイルがテポドンでも発射するのだろうか? それとも古い人工衛星が落下してくるのだろうか? ノストラダムスを信じるなら、今は家でじっとしていたほうがいいのかもしれない。

だが、ノストラダムスの四行詩と実際の出来事を照合すると、当たっている予言はわずか1%しかないという。Tomyはハルマゲドンを巨大シイラ“ハリ曲げドン”の襲来ではないかと勝手に解釈して湘南ロケッツに招集をかけたのだった。

*

7月3日朝6時、Tomy他4名の湘南ロケッツが平塚に集合した。あいにくの雨で庄治郎丸ではキャンセルが続出したようだ。ロケッツ以外でシイラ船に乗るのは、よく見る顔の6人と初心者グループ5人だけである。

「Tomyちゃん。この人達、初心者だから、いろいろ教えてやってよ」

庄治郎丸の波平専務に頼まれ、Tomyは初心者グループにルアーの説明をすることになった。

「あのぉ〜、ルアーはこんな感じでいいですかね?」

初心者グループのリーダーはルアーが7,8個入った箱をTomyに見せながら言った。中に入っていたのは青と蛍光色のトビペンが各1本。シーバス用の真新しいミノーが3本。そしてPop Queenなどのトップウォータープラグが3本ほどだ。初心者にしてはよく揃えてきた方だろう。

「天気悪いからジグがあったほうがいいんじゃない?」

「ジグ・・・・?」

「ナマリにお魚の絵が描いてあるやつだよ。今日はルアーを沈めないと釣れないと思うよ」

「ここで売ってますかね?」

Tomyは庄治郎丸にジグが置いてあることを知らなかったが、しばらくすると初心者グループのリーダーは5本のYO-ZURI製ジグをTomyに見せに来た。どうやら庄治郎丸にストックがあったようだ。

「これで足りますよね」

「ああ、いいんじゃない? なんとかなるよ」

しかし、それを言ったあとでTomyはアゼンとした。さっき見せられた7,8本入りのルアーケースは5人分の全財産だったのだ。

(`⊥´! (`⊥´! (`⊥´!

いつも重さ5キロはありそうなルアーケースを見慣れているから、7,8本しか入っていないルアーケースを見て、ひとり分と勘違いしたのである。初心者の感覚とは、すでにかけ離れてしまっているラシイ。改めて自分たちのバカさ加減を思い知った。

釣った魚の数十倍ルアーを買っているキミ! キミも相当なオバカだ。初心に戻ったほうがいいぞ。そうすれば安月給でもなんとかなる。

悪天候

さて、出発だ。上の写真は一番前がTomy、2番目がプロカメラマンのオカラさん、そして手前が北海道からシイラを釣るためにわざわざ移住してきたOkiguti さんである。この写真を撮った時はそれほどの降りではなかった。

しかし、沖に出た途端、大粒の雨が南から吹きつけてきた。前を向くと雨粒が容赦なく顔をたたく。まるでコイン洗車機で顔を洗っているようだ。いくら美白ブームとはいえ、あまりにも顔が痛い。痛すぎる! その勢いは、まぶたを引き裂くほど強烈だった。

*

およそ1時間、何も発見できぬまま庄治郎丸は南に向かった。

時刻は7時半。少しずつ雨が弱まって大島の方向に雲の切れ間が見えてきた。陸地は見えないが、おそらく城ケ島のラインは越えているのだろう。波間にゴミや浮き藻が見え隠れしはじめた。

木の枝などに向かって2,3投しては、さらに南に向かう。ベニア板に向かって2,3投、浮き藻に向かって2,3投。さらに潮目に沿ってシイラ探しの苦闘が続いた。

*

8時過ぎ、庄治郎丸は雲の切れ目に入ったようだ。まるで台風の目に入ったかと思うほど風が静まり、雨も降っていない。あとは浮遊物さえ見つかればこっちのものである。

8時20分、ようやく潮目で浮き藻のかたまりを見つけて戦闘開始。船をトロトロ進めながらキャストを繰り返しはじめた。ここはいかにもシイラがいそうな場所である。願ってもないチャンスだった。

自爆だそうですしかし! ここで大事件発生。さっきの初心者グループのひとりが顔にルアーを突き刺してしまったのだ。せっかくシイラがいそうな場所を発見したのもつかの間だった。

手で隠しているが、ほっぺたには買ったばかりのYO-ZURI製ジグがグサリ! 多分バーブレスにしていなかったのだと思う。長時間そのままにしておくこともできないので庄治郎丸は全速力で港に引き返すことになってしまった。

ちょっと危ない目にはあっているが、実際にこのような事故に遭遇したのは初めてだ。目の届くところにいてくれれば事前に注意もできただろうが、初心者グループは、あいにく船の反対側で見えないところに陣取っていたのである。

もし見えるところに初心者がいたら、遠慮なくアドバイスしたほうがいいね。みなさんも、これからはそうしてほしい。あとで聞いた話だが、この人は顔を切開してハリを取ってもらったそうだ。何針か顔を縫ったらしいぞ。

*

さてさて、この事件があって釣りは中断。せっかく沖の晴れ間にいたのに庄治郎丸は雨が降りしきる平塚に戻ってきた。海は相模川が運ぶ土砂で赤茶色に濁り、とてもシイラを狙えるような状況ではない。

Tomy達は事件後1時間半を船室で過ごし、キャストを再開したのは真鶴半島沖だった。雨はほとんど止んでいたが、そのかわり今度は2.5メートルほどのうねりが船を襲う。

ロッドを振りながらのロデオ大会。危なくって、ハイパートゥイッチなんかやる余裕はない。ジグをぶん投げてタダ巻き、波を乗り越えるときは手を止めて左手で手すりにつかまる。

何の反応もなし!!! サバさえも釣れない。アジ・サバ乗合いの後ろに船を付けてジギングを試みるが、それにも反応なし!!! けっきょくは丸ボウズだ。

かとうさん、オカラさん

いやはや、みなさんお疲れさま。これにめげずにまた行きましょう。

しかし、初心者グループにとってはノストラダムスの予言が的中したね。空から降ってきた恐怖の大王はルアーだったけど・・・