漁魔が行く-04(魔餌木編)

必殺! 土佐鶴釣法<2>

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1999年2月2日

午前4時、漁魔はクルマのラジオをつけました。「東シナ海の海上、東経127度、北緯32度30分、気圧、984ヘクトパスカル、曇り、西北西の風・・・」

『どうやら強力な低気圧が接近中らしい。魔エギ開発を急がねば!』

ニャンズり漁魔はシュラフから飛び出すと、すぐにキャストを再開しました。選んだエギは YO-ZURI ゆっくり君オレンジ4号です。満月に照らし出された雲を見ると、風は次第に北から北西へと角度を変えているようでした。

「ニャーオー」

「おお、猫ちゃん、ソーセージをあげよう」

「かたじけにゃい」

(`⊥´)/

「おお、ニャホン語ができるようじゃね」

「調子はイカがですか?」

「今日はイカんよ」

「イカ釣りですか?」

「イカにも・・・」

「あっしは、あしずり港の魚河岸ニャ主、ニャンズリと申しやす」

「ニャンズリか・・・、ワシは漁魔じゃ」

「おお、あにゃたが漁魔さまですか。お噂はかねがね・・・」

めったちや! こんな遠方まで名がとどろいちょったか?!」

※「めったちや!」→「何と!」 「遠方」は現代でも良く使う

「ハイ、伊豆下田港のニャンシロウ親分をご存知でしょう。ニャンシロウ親分と土佐下田港(中村市)のニャン幡多(はた)親分は親戚にゃがです」

「ふむ、それで?」

「猫の世界には独自のネッコワークというものが発達しちょりまして、遠くはにゃれちょっても情報伝達ができるがです」

「にゃるほど、とりあえず信用しよう」

「ネッコワークは人間の世界でテレパシーにゃどと呼ばれちょるがです。猫の方が、人間よりある意味では進んじょるがですよ」

「そうか、伊豆下田のニャンシロウには、いつもソーセージを褒美にやっておる。ネッコワーク情報おかげで下田ではボウズ知らずじゃ」

「伊豆での釣り方と、あしずりでの釣り方は違ごちょるかもしれません」

「どう違うじゃ?」

「とりあえずやってみてください」

「・・・・・」

「読者にわからにゃいじゃにゃいですか。声で表現してください。声で…」

「よし、わかった。よく見ておれ」

「ビシュ! ら・ん・ま・ん」

「うーみゅ。まず、“ビシュ!”は大仰じゃにゃかろうか。それから、漁魔さまは“ら・ん・ま・ん”のところで糸をゆるめよるけんど、そんにゃがぁやりよったら、ここの目ざといモイカにはスッと見切られてしまうがです」

※大仰「おおぎょう」も高知の人は良く使います。

「どうすりゃエイがじゃ?」

「とさっ! づるっ!」

「ん?」

「まず“とさっ”で軽くしゃくってエギを跳ね上げます」

「にゃるほど、そあとズル引きじゃな?」

「違います。“ズルッ”と“づるっ”はまったく違うテクニッキにゃがです」

「そう言うたら、金田一京助が言うちょったにゃあ。土佐においては“ズ”と“ヅ”、“ジ”と“ヂ”に違いがあると・・・」

「その通りです。“ズル引き”というのは底をゆっくり掻いてくるテクニッキじゃけんど、“づるっ”は違うがです。糸ふけを素早く巻き取って、エギが底に着くか着かぬかというタイミングで次の“とさっ”の動作に移るがです」

「素早い釣り方じゃな。よし、やってみよう」

「それから、この沖は水深が8メートルばぁのドンブカににゃっちょりますけん、エギは蛍光が入っちょるピンクがえいです」

漁魔はニャンズリの言う通りにしました。まず、“とさっ”のところでは手首を返さず、軽く45度ほど竿をはね上げます。決して“ビシュッ!などという”大げさなシャクリは入れません。

そして、糸ふけを“づるっ”と素早く巻き取って、エギがノーズダイブしないようにカーブフォールさせてやるのです。

さらに、エギが着底するかしないかという微妙なタイミングで次の“とさっ”の動作。これは本当にテンポの速い釣り方でした。今までの釣り方とはまったく正反対です。

“とさっ、ぎゅー!”

「やりましたね、漁魔さま」

「よし! 500グラムはあるな」

900グラムのアオリ

“とさっ、グ和紙ッ!”

「おお、太かですよ。慎重に!」

「やったー! これは900グラムはありそうだ」

姫カツオ「ニャンズリ、おかげで目からウロコが落ちた。礼を言うぞ!」

漁魔は道の駅で土産用に買った姫カツオスティックを取り出してニャンズリに与えました。この姫カツオというのはソウダガツオのなまり節に味付けを施したもので、なかなかうまいのです。

※それから土佐牛、土佐和紙もお土産にどうぞ。

「かたじけにゃい」

(`⊥´)/

その後も漁魔は300から400グラムのアオリを3バイ追加。何と、わずか1時間ほどの間に5ハイを連続で釣り上げたのです。ニャンズリは漁魔の爆釣を見届けると、魚河岸の見回りに行くと言って闇の中に消えて行きました。

「ついにやったぞ。必殺! 土佐鶴釣法の完成じゃ!」

(T⊥T)/

時刻は6時になりました。夜明けまであとわずかというときに、昨日とは違う地元の釣り師が岸壁に現れました。見た感じ、定年退職後のご隠居という雰囲気です。

「釣れちょる?」

「エエ、6パイほど・・・」

「見てエイかのぉ?」

「どうぞ、そ袋に入ってますけん」

「おお、太いちや! 立派なもんじゃ。おまん、見ん顔じゃけんど・・・」

「神奈川から旅行で来てますけん」

「ほーかね。わたしゃあ、毎日この堤防へ行っちきちもんちきちしよるけんど、ここんとこ1パイか2ハイがエイとこじゃ。これっぱあ釣りゃ立派なもんじゃのお」

※行ったり帰ったりするけど

「いや、ニャンズ・・」

「田中さんを知っちょるじゃろ、あん人も毎日来るけん。じゃけんど、田中さんも、ここんとこほとんど釣れちょらん」

『田中さん? 知らんっちゅー! 神奈川から来たって言うとるじゃろが!』

※多分田中さんはイカ釣り名人、もしかして昨日のフグ餌オジサン?

「そこを海底崎陽軒ようのう鳴るじゃろ?」

「んぁ?」

「底を、かいて、きゆうけん、よう、のうなるじゃろ?」

方言解析カンピューター作動・・・

(海の)底を、(引っ)掻いて、来るから、(エギが)よく、なくなるだろ?

「いや、それほどなくなりませんよ」

「ほーかね」

実はこのご隠居が来てからまったく釣れなくなりました。不思議なものです。やはり猫には福を招き入れる能力があるのでしょうか。まあ、方言解析カンピューターに、かなりメモリを割り当てなければならなかったので、そのせいで集中が途切れたのかもしれませんが…。

“必殺! 土佐鶴釣法”は是非一度お試しください。“美酒! ら・ん・ま・ん釣法”と組み合わせれば釣果が倍増することでしょう。ホンマかいな? まだ続きます。