漁魔が行く-04(魔餌木編)

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1999年2月2日

あしずり港フェリー岸壁は毎秒10メートル以上の強風にさらされていました。エギをキャストするなら灯台のある先端部以外にポイントはありません。漁魔は日没まで仮眠して、5時半頃作戦を開始しました。

突風が吹くと1歩前へ出なければ吹き倒されてしまいます。今日は大潮で満潮が夜7時、風さえなければ願ってもないイカ曜日なのですが…。

朝方のノンビリムードはどこかに吹き飛ばされました。1、2歩よろけても海に落ちぬよう岸壁の際から離れなければなりません。満潮でも海面までは6メートルもあるのです。

毎日来るはずの田中さん、そして土佐鶴釣法を教えてくれた恩猫ニャンズリ。さすがにジモティーは誰ひとり、猫一匹現れませんでした。

しかし、こんな爆風でも追い風なら何とかなるものです。きのうの釣りで根掛かりがないことを知っていたので、ラインはロックハイパーの12ポンドに巻き替えています。これなら相当なロングキャストができるでしょう。

案の定。爆風に乗って、3.5号のエギはとんでもない飛距離を稼ぎました。およそ70メートルの大飛行。名づけて“日の丸飛行隊キャスト”。スプールは初速のまま見る見るうちにやせていき、エギが海面に着くころになってもラインは出続けます。もうK点越えの連発!

「原田行ったぁ〜!」

「船木も行ったぁ〜!」

「ニッポン金メダル!」

あの感動がよみがえるスーパーロングキャストの連発。着底なんかわかりません。頃合いを見計らってラインを張るしかないのです。灯台に背中を押しつけて、ロッドに風が当たらないようにしました。

“とさっ づるっ とさっ づるっ とさっ づるっ”

“とさっ づるっ とさっ づるっ とさっ づるっ”

リズミカル&スムース。海底すれすれでエギを泳がせます。

“とさっ づるっ とさっ づるっ とさっ づるっ”

“とさっ づるっ とさっ づるっ とさっ づるっ”

キャスト開始から1時間経過。風は“グウォー グウォー”と唸りを上げ、冷たい大粒の雨も混じりはじめました。普通ならここで止めるでしょう。普通なら…。

爆風に挑むしかし・・・

『いつまたここに立てる日が来るかわからない』

そう思うと容易に諦めることはできません。

『あと3投だけ…』

漁魔は残りの集中力すべてを3投にブチ込むことにしました。

1投目、星飛雄馬の目。血の汗流せ、涙をふくな、行け行け、漁魔、ドンと行け!

『これでもか!』

2投目、星一徹の目。ちゃぶ台返しだ、ライオンだ、我が子も谷に、突き落とす!

“グワシッ!”

来ました。まぎれもなくアオリイカの引きです。50メートル以上離れているのに、明確な手応えが伝わってきました。

『あと3投!』皆さんも是非お試しください。漁魔はポイントを見切るときに、心の中で『あと3投!』と唱えることにしています。集中力を呼び覚ますにはいい方法ですよ。

いやー、それにしても釣れて良かった。納竿のタイミングは絶妙でしたね。その後は雨が大粒になり、次第に冷え込みがキツクなったのです。