Gussulin

厳しい掟

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さてと、魚が釣れたところでバーベキューの用意だ。Tomy がナイフで魚をさばき、持参した木炭で焼きはじめる。その間にトコロとピカルが買い出しに行って、ビールやソーセージを仕入れてきた。

そして、N男ちゃんはみんなが釣った魚を、しっかり、こんがり、何回もひっくり返して美味く焼き上げた。魚とソーセージが焼けたところでいよいよ乾杯だ。だが、ここでトコロが意地悪なことを言いはじめた。

「N男ちゃんは釣ってないから魚ナシだっち」

「働かざるもの食うベカラズ!

続いてピカルもキツーイ追い討ち。「N男ちゃんはこれね!」と言って、15センチぐらいの1番小さなコッパヤマメを手渡した。N男ちゃんはかわいそうにコッパヤマメを大事そうに骨までしゃぶって屈辱に耐え忍んでいた。

「働かざるもの食うベカラズ!

以後も、このセリフは何度も繰り返された。今回の旅行中、釣りが下手な者はこのような仕打ちに耐えなければならないのだ。甘っちょろい考えで釣りはうまくならない。釣れなければ自分が餓えるというキビシイ環境を作らなければ真剣味は生まれない。だから、Tomy 隊長は敢えて陰湿なイジメ行為に同調したのだった。

さて、バーベキューのあとはキャンプ地を探すことになった。しかし、キャンプに適当な場所はなかなか見つからない。夕方までにテントを張れる場所を探さなければならないのだが、ここでは見つかりそうもなかった。わかっていると思うが、Tomy の眼中にキャンプ場なんてモノは最初からないのだ。キャンプする場所にカネなんか払った試しはない。

「テッシュー!」

気が短い Tomy 隊長はすぐに決断し、一行は再び東北自動車道を北上することになった。目的地は秋田県北部の小坂川だ。

小坂川は川幅が狭く4人では窮屈だが、魚はそこそこいる。Tomy 隊長はN男ちゃんを引き連れて2人だけで偵察に出かけた。トコロとピカルは今後の運転を任せるために車の中で眠らせておいたのだ。

車からわずかのところに人工的な絶好のポイントがあったので、まずここにN男ちゃんを行かせ、Tomy はズンズンと先に進んで行く。アシの際やコンクリート護岸の脇からコッパヤマメが次々に飛び出した。

『なかなかいいぞ』

Tomy は2、3匹釣ったところでN男ちゃんの方を振り返った。すると、N男ちゃんは身じろぎもせず、最初のポイントで糸を垂れているではないか。

「N男ちゃん! 同じところで粘っても釣れねーよー!」

大声を出したが無心のN男ちゃんは微動だにしない。仕方ないので Tomy は川の反対側に渡ってN男ちゃんお気に入りのポイントまで戻ることにした。N男ちゃんはヤマメ釣りをフナ釣りと勘違いしているようだ。彼の仕掛は深場の渦の中でグルグル回っている。さっきから同じところで目印がグルグル回っているのだ。

『しょーがねーなー。エサも付け替えないで…』

Tomy は呆れて見ていたが、そのうち何か変だなと思い、「引いてるんじゃないか?」とN男ちゃんに大声で怒鳴った。

N男ちゃんが竿を持ち上げると何か掛かっている。小さいがイワナだ!

「やっ・・」

N男ちゃんの手元まで来たイワナはハリが外れて足元にポチョリ。本当は「やったぜ!」と言いたかったのだろうが、そのヒマさえなかった。N男ちゃんは足元で逃げ回る小イワナを追いかけて右往左往、結局はつかみそこねてビショ濡れになってしまった。

「あーあ、せっかく釣れたのに」

N男ちゃんはガッカリしていたが、これで良かったのだ。捕まえたとしてもあれは釣ったんじゃない。釣れちゃったのだ。それに小さすぎてキープできるような魚ではない。Tomy はここでもキャンプは無理だと感じた。魚は釣れるが何か物足りない。護岸工事を施された川で釣りをしても、ちっとも面白くないのだ。大きな魚が隠れられそうなポイントは限られている。だから、多分大物は釣り切られていると判断した。

「テッシュー!」

もうすでに16時過ぎという時間だったが、Tomy は小坂川を後にする決意をした。彼は誰もいない所でキャンプをしたかったのだ。キャンプ場でキャンプをしても面白くも何ともない。キャンプに適当な場所は自分で見つけてこそ価値があるのだ。ここで Tomy は思い切って青森に行こうと考えた。学生時代に最高のキャンプ地を見つけ出していたから・・・。