Gussulin

へ竜飛岬のN男ちゃん

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朝食のあとはキャンプ地のまわりを探険し、ミズバショウの群落を発見したり、N男ちゃんに渓流釣りの手ほどきをしたり。しばし、憩いのひとときである。清らかな流れ、鳥の声、深い森の緑に包まれて、4人はアウトドアの楽しさを肌で感じた。

そして昼。一行は買い出しを兼ねて、竜飛岬の観光に出掛けた。Tomy は竜飛岬だけでも3回目だった。Tomy はどうも端っこが好きらしい。北海道や東北でもたくさん岬めぐりをしてきたけれど、岬というと必ず真っ先に思い浮かべるのが竜飛岬。その次がエリモなのだ。

2つの岬は何度行ってもいい。風、怒涛、深く重い群青色の海、そして開けた眺望。どれを取っても旅情をかき立てられる場所である。特に竜飛岬はいつ行っても風が強く、断崖の下に見える海はいかにも深い。それは魚も住めぬほど透明で、毒々しいメチレンブルー。遥か北方に目をやれば、かすかに北海道の南端が見え、その海底には長大な青函トンネルが眠っている。

ここに立つと、思わず ♪上野発の 夜行れぇしゃ 降りたときから♪ なんて、つい歌いだしてしまうのだが、あなたはどうだろう? 行ったことがない人は、1度行ってみるといい。4人は風に吹かれながら、竜飛岬の店屋で大きなイカの一夜干しをひとり1枚ずつ買った。これは身が厚くて1枚食べれば他に何もいらないぐらい満腹間違いなし。うまいんだな、コレが!

さて、観光のあとは漁港の探索だ。

ピカル達が釣りをしたいと言うので、Tomy はナイフで木を削って即席のウキを作り、岸壁で釣りをすることになった。エサはさっき食べたイカのゲソである。釣れるのなんのって、そりゃぁもう、スゴイ、スゴイ。釣れるのは小さなフグばかりだが、ウキを思いっきり消し込むから結構面白いのだ。

Tomy はアホ臭くなってすぐやめて寝たが、特にピカルとN男ちゃんはこの釣りが気に入ったらしく、“やめられない、とまらない”のカッパエビセン状態に陥ってしまった。あきれて Tomy とトコロが車の中で一眠りしたあとも、まぁーだやっている。

「そろそろやめて帰ろう」と言いに行くと、2人は釣ったフグを大事そうにペットボトルに入れて鑑賞しているではないか! 彼等は子供時代に戻っているわけではないのだ。単に、やったことがないから面白くてしょうがないだけ。だんだんこういう変な大人が増えているんだろうね。世の中…。

イレグイだぜ! 兄ちゃん!」

N男ちゃんはうれしそうにペットボトルを持ち上げて見せた。本当に無邪気である。もう精神年齢は5歳ぐらいに若返ってしまったようだ。

「そろそろ行こうぜ!」と言うと、2人はペットボトルのフグを海に戻し、我にかえった。

「おっ、いいモノがあるじゃねぇー。これは使えるなぁ!」

N男ちゃんは漁港に積んであったイカを入れる木箱に目をつけ、漁師さんに見つからないように素早くツーリングワゴンの荷室に木箱を4つ積み込んだ。いったい何をする気なのか…。4人はその後、野菜や焼魚用の海タナゴを買ってネコジャラシ川に戻っていった。

ゆうがたー (`⊥´)/

夕飯の仕度は Tomy とトコロがすることになった。そのあいだ、N男ちゃんとピカルは渓流釣りである。薄暗くなる頃、キャンプの上流に2人は消えていった。

★ピカッ★ ゴロゴロゴロ…、ドッカーン! ザザザー!

突然の夕立だ。まったくN男ちゃんがヤル気を出すとロクなことがない。焼き魚が水浸しになってしまうではないか。海タナゴはN男ちゃんが「うまそう!」と言うので買うことにしたのだが、25センチぐらいの大物なので簡単には焼けない。Tomy は大粒の雨の中で、必死の焼魚作業を続けていた。

「さびー、さびー」

ズブ濡れになって2人が帰ってきた。随分粘ったわりに釣果はゼロ。しかも、N男ちゃんは竿を折ってしまったらしい。

「イワナが釣れたんだよ。でも、魚ごと仕掛けが木にからまって…」

N男ちゃんはそんなことを言いだした。すると、ピカルはゲラゲラ笑いだして、どうにも笑いが止まらなくなってしまった。いったい何があったのだろう?

「イワナを外そうとしたけど、向こう岸の木にからまって取れないから、川に入ったんだ。そしたら足が滑って…」

そこまでN男ちゃんが言ったあと、ピカルはお腹を抱えながらこう言った。

「え・え・えぬおちゃん、イワナと一緒に流れていっちまったんだよぉー」

もうそのあとは笑いがこみ上げて話せない状態。結局釣ったイワナはどこかに流され、しかも、竿は折れ、N男ちゃんは全身ビショ濡れになったのである。

“ヘタッピ岬のN男ちゃん”Tomy は即興でN男ちゃんにアダ名をつけた。

水浸しになった海タナゴの塩焼きはまずくて食えたものじゃなかった。じっくり焼けばウマイのだろうが、雷雨の中で悠長なことは言っていられない。4人はメシをかき込むと食器洗いを雨粒に任せることにして、大急ぎでテントに逃げ込んだ。