Gussulin

水没

7/9:最初のページ

翌朝はご覧のように悲惨な状況ではじまった。気がついてみるとテントが濁流に飲み込まれていたのである。

テントが水没

「なんかツメテッチよー」

「ゴーゴーいってるなぁ・・・」

4人がそこで見た光景は信じがたいものであった。夕方にはテントから川までの距離が10メートルはあったのに、今はゼロメートルなのだ。“窓を開ければ、もう、そこは川”なんかリゾートホテルのキャッチコピーみたいだが、洒落にならない危機が4人に迫っていた。

全員飛び起きてテントごとすべてを陸揚げし、急いで流された食器類を拾いに行く。コッヘルは無事だったが、プラスティックのお椀やしゃもじは流失してしまったようだ。雨は既にやんでいたが、全員ビショ濡れでガタガタ震えている。Tomy 隊長は緊急撤収を決断し、すべての荷物を車にブチ込むと、ヒーターをフルパワーにして津軽半島の付け根にある黄金崎不老不死温泉へと急いだ。

不老不死温泉、日本海に面した景勝地。特に夕陽を見ながら入る露天風呂がサイコーである。ここは Tomy が今回の旅行で必ず立ち寄ろうと思っていた所だった。天気は次第に良くなり、黄金崎に着くころには青空が広がっていた。ゴツゴツした磯にタープがかけられた岩風呂があり、4人は濡れた服を脱ぎ捨てると急いで露天風呂に直行した。実に雄大な景色である。

ここへ来られただけでも旅気分満喫だ。まさに極楽、極楽! こんな所があるから日本は素晴しい。たとえサウジアラビアの王子でも、こんな贅沢は味わえないぜ!

さーて、こうしちゃいられない。

今回は渓流釣りがメインなのだよ。豪雨で増水した川を避け、何とか釣りができる川を探さなければならない。Tomy 隊長はピカルに運転をさせ、追良瀬川、赤石川を見に行った。しかし、どこも濁流で釣れそうもない。

『こういう時は普段あまり水のない農業用水に行くしかないな』

Tomy はそう考えて、鯵ケ沢にあるネコ沢川(仮名)に狙いを定めた。まずは土手に車を停めて、濡れたシュラフやテントを広げて干す。たとえ釣れなくても、しばらくここに留まるつもりだった。

ネコ沢川は普段、ほとんど水の無い川なのであろう。農家が田んぼに水を引くための川なので、豪雨のあとでも緩い流れである。多少濁ってはいるが、十分釣りができるレベルだった。川虫が捕れないのでエサはミミズを掘ることに…。しかし、掘れども掘れども太いミミズは見つからなかった。10分ほど掘り続けただろうか? Tomy がようやく太いミミズを掘り当てたが、それは後にも先にもたった1匹の、金塊のように貴重なミミズ。

Tomy はそのミミズを大きめのハリに付け、堰堤の落ち込みに投入。すると・・・糸フケができて仕掛けが流れない。竿を持ち上げてみると根掛かりのようだった。

『貴重なミミズだ。一発で失うには惜しすぎる』

Tomy はそう思って川に足を一歩踏み入れた。すると、糸がツツツゥーッと横に走り、銀色に輝く魚体が一瞬見えた。『デ・デカイ!』まさかと思うほどのサイズ。トコロにタモ入れを任せ慎重に取り込んでみると、36センチの丸々と太った岩魚であった。

『こんなところに、こんなデカイのがいるんだぁー』

4人とも暫し呆然とした。

イワナ

Tomy は早速ナイフで腹を裂いてみた。すると、未消化のアマガエルが3匹も…。道理で太っているわけだ。4人はまだ食事をしていなかったので、すぐに焚き火をしてイワナを焼いた。田んぼのあぜ道で即席の朝御飯。イワナはあっと言う間に食べ尽くされてしまった。

なんという早業、そしてなんとも行き当たりばったりの無計画さ。しかし、こういう旅もまた一風変っていて楽しかった。野性味があって大変によろしい! Tomy は学生時代にイヤと言うほどキャンプをしてきたので、こういう旅が好きなのである。無計画な旅こそ本当の旅なのだ。パック旅行なんてクソ食らえ! 絵はがき通りの景色を見て、パンフレット通りの食事をしてもまったく面白みがない。面白いことは自分で探さなきゃいけないのだ。

最近はインターネットで観光地のことをたいてい調べられる。しかし、行く前に何もかもわかってしまったら行く気をなくすだろう。そんなのはホントの旅じゃない。行き当たりばったりで知らない田舎にテントを持っていくのがホントの旅だと思っている。

Tomy は学生時代、児童公園のブランコのそばでテントを張ったことさえあった。児童公園は結構いいキャンプ場になるのだ。水飲み場があるし、トイレもある。意外に盲点の無料キャンプ場ってとこかな? キャンプ場にお金を払うなんてバカクサイからやめた方がいいよ。

キャンプ場でしかキャンプをしたことがない諸君。それは本物のキャンプじゃない。キャンプは適当な場所を探すところからはじまるのさ。頭を使わニャ!

ラストが面白いんだよ。実は…