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Tomy とニャン吉は水上生活者である。長引く不況のあおりで Tomy の財産はプレジャーボート1隻のみになってしまったのだ。ひとりと1匹はインターネットで釣り客を集め、シイラやシーバスを釣らせて細々と生活していた。
しかし、最近は不況がますます深刻化するばかり。週末以外にお客さんが来る日はほとんどない。まあ、米さえあれば死にはしないのだが…。
「船長、最近お客さん少にゃいですね」(ニャン吉)
「ホントに困ったよ。みんなどうしたのかな?」(Tomy)
「良く来てくれるメガネの人、最近来ませんね」
「ああ、麦田さんね。メール出しても返事がないんだ」
1999年6月 イルカトラズ島
「麦田さん、釣れましたか?」(井上)
「うん、ボチボチってとこかな? 今日はなかなかいい型のカンパチが釣れたよ」(麦田)
「ほぅ! カンパチの刺し身か。 イルカトラズに来るまでは食べたこともないごちそうです」
「まあ、住めば都ってとこですかね。こんな島でも釣具さえあれば、僕にとっては天国にいちばん近い島です」
刑務所にいるはずの麦田だが、彼の表情に暗さはミジンもなかった。麦田にとってこの島は本当に天国なのだ。イルカトラズはまさに釣り人天国。磯釣りでカンパチ、シマアジ、ハタなどを簡単に釣ることができる。
食料の配給は麦飯とサツマイモ、それに味噌醤油ぐらいしかなかったが、囚人達の食卓はシャバよりも数段ヘルシーだろう。むしろ食生活に関してはシャバにいるときより良くなった者も大勢いるほどだ。
ここに送られてきた囚人はほとんどが初心者のドロボーで、凶悪犯は少ない。根っからのワルはいないと言っても良かった。
だから約100人の囚人はすぐに打ち解けて共同作業を営むようになった。釣りが得意な麦田は磯釣り隊の隊長。水中クンバカで潜水の達人になった元インコ教幹部の井上は素潜り隊の隊長である。
彼等は力をあわせ、食料の調達に精を出す毎日だった。