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1999年1月、ついに不治銀行の燈が消えた。本橋政権時代に打ち出された金融 支援策は焼け石に水だったのだ。経営の息詰まった不治銀行は既に脳死状態だった。驚くほどのことではない。延命のために取り付けられた人工呼吸装置が外されたに過ぎないのである。
政府は巨額の公的資金をつぎ込んで蘇生を試みた。しかし、天文学的な不良債権を抱えた不治銀行を生かし続けること自体、もはや悪以外の何者でもないだろう。
「船長、不治銀行が潰れましたね」(ニャン吉)
「えっ? ホント?!」(Tomy)
「船長は不治銀行におカネを預けてた?」
「いや、銀行に預けるほどカネなんてないよ」
「ニャンでも預金の6分の1は公的資金で返還されるらしいですけどね・・・」
ある程度わかっていたが、このニュースはかなりショッキングだった。護送船団の旗艦“不治”が撃沈されたのだ。守ってくれる戦艦が沈んでしまったのだから、ゼネコンなどのドロ船は放っておいても沈んでしまう。
『ニャホンはこれからどうなってしまうのだろう?』
人々は急に空が低くなったように感じた。それはまるで、どんよりとした雲に街中が覆い隠されたかのようだった。
その後、ニャホンの治安は急速に悪化した。銀行が信用できないから人々は現金を自宅のどこかに隠すしかないのである。大金持ちならスイス銀行を利用するという手もあるだろうが、街にスイス銀行のキャッシュ・ディスペンサーはない。だから庶民は自宅に現金を置くようになったのだ。
そうなるとドロボーにとっては、まるで天国のような状態である。こそ泥・空き巣・強盗などがニャホン中を荒しまわり、警察も手に負えない状態になってしまった。もう既に警察官を上回る数のドロボーがいるのではないだろうか?
もちろん捕まってしまう初心者のドロボーも多かったが、今度は困ったことに留置場が足りない。苦肉の策として、政府は太平洋に浮かぶ絶海の孤島“イルカトラズ島”に囚人達を移送することになった。
この島から逃げ出すことはまず不可能だ。島には1本の木もなく、イカダを作ることさえできないのである。急きょ建設された即席刑務所には、毎週大勢のドロボーが本土から送られることになった。
予算削減のため、島に看守はいない。囚人達はちっぽけな島で自給自足の生活を送るしかないのだ。政府は囚人達に生き延びる手段として倒産した釣具メーカーの差し押さえ品を与えることにしたのである。