Hokkaido 1980

滝の偵察

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この川は羅臼よりちょっと南にあって、水源池は羅臼湖である。今は知床横断道路から羅臼湖に降りる道が開拓されているが、当時は知西別川をさかのぼって行く以外に羅臼湖への道はなかった。知床横断道路が完成したのは1980年のことだから、ほぼ間違いないと思う。

この川は釣りに来る人と、秘境中の秘境、羅臼湖へ登る人が訪れるだけの川だ。登山の時期としては8月、9月の2カ月だけ。7月まで雪解け水が出るので、水はすこぶる冷たい。途中に難所があるので7月はまだキケンだと思う。

そして、もう一つのキケンは熊だ。8月も末になると熊が荒食いの時期に入る。熊に出くわさないように爆竹や笛などの準備は絶対に怠らないでほしい。アタシ達は爆竹をふんだんに持っていたので、1回も出会うことがなかった。

リンクを入れたページに詳しい熊対策が書かれているので必ず読んでから出掛けよう。特に食料やゴミはキャンプに放置しないこと。熊はジュースやビールの味を知っているので、缶を外に出しておくのもアブナイ。最近は臭いがしなくても缶をあさるようになっているのだ。

さて、いよいよ一行は知西別に入った。まずキャンプ地だが、そこは河口から1キロも入っていない。だいぶ前に堰堤工事があったようで、工事のために作られた道は完全に雑草で覆い尽くされていた。

その日はとりあえず夕飯のおかずを釣りがてら問題の滝を見に行くことにする。地形図に記された滝がどれぐらいの滝なのかは行ってみないとわからなかったのだ。第1堰堤を超えていくと、しばらくご覧のように釣りやすい場所がある。

下流域

だが、良く見ると川岸が2段になっているのがわかるはずだ。人の背丈ほどの段があって、その上が平坦になっている。これは雪解け時の水位を物語る段差だろう。羅臼岳に降り積もった雪が解け出すと、想像できないほどの水量になるらしかった。

この日、アタシとアンコウはテンカラ釣りとフライで素早く釣り上がり、井出は竿を出さずに爆竹係をやった。『ここぞ!』と思うポイントでは必ずオショロコマが飛び出してくる。こういうときの毛針釣りほど面白いものはない。

1キロほど行くと川が急に細くなり、両側の壁がそそり立ってくる。そして、川が右に90度屈曲したあとに、どうしても対岸に渡らなければならなくなった。水深は腰の高さぐらい。かなりの急流なので6,7メートルの川を渡るために20メートルほど下りながらの徒渉になった。

そしてまたしばらく行くと、今度は川の中にある大岩に飛び乗って、一気に対岸へ飛び移らなければならない難所が待っていた。

難所の突破

ここは屈曲部がかなりの急流になっているので上流に向かって左側の壁をヘツッて行くしかない。一行は水中の大岩を踏み外さないようにひとりずつ左側に飛び移っていった。

しかし、そこからが最大の難関だった。長い年月急流で洗われた岩盤は手掛り足掛かりに乏しく、しかも数少ない突起や割れ目は壁にへばりついた状態では見えないのだ。

手掛かりは自分の目で探すことができるが、足掛かりの方は足で探っていくしかない。手掛かりだってせいぜい5ミリぐらいだったと思う。体を壁にピッタリ付けていなければ滑り落ちてしまいそうだった。

こういう場合はひとりひとりヘツッて行って、順番待ちをしている者が足掛かりの場所を教えるのだ。わずかな距離だったが、突破には10分近くかかった。

知西別湖の滝

河口から4キロメートル上流。ついに大滝が姿を見せた。下の方はナメ滝になっているが、上の方はかなりの勢いだ。この写真ではわかりにくいが、落差はおよそ30メートル。落下角度は45度から70度ぐらいだろう。

この上に目的地の知西別湖があるはずだ。

「30メートルぐらいか?」

「・・・・・・・・・・」

しばらく言葉が出なかった。タダタダ滝を見上げるのみ。